家族シアター ページ12
ギィィィィ………
トラックの戸が耳障りな音を立てる。
鈴『来て』
人虎が覚束無い足取りで来る。
ズルズルズル
人虎が羅生門に引きずり込まれていく。
ヒュンッッッバタン!!!!!!
人虎が叩きつけられる。え、痛そ!!
敦「グアァッ!」
芥「殺す積もりで刺したが……不完全ながら虎の治癒能力が資されているか……」
敦「此処は……海?」
芥「密輸船だ。武器爆弾の類を運ぶ。今日は貴様の為の貸し切りだが」
芥「引き渡しまでもう数刻も無い。人生最期の船旅を楽しめ。人虎」
敦「断……る……」
芥川君が人虎を踏みつけ、人虎が苦しげな声を出す。
敦「ぐ………がっ………!」
芥「貴様の意志など知らぬ。『弱者に身の振りを決める権利など無い。』」
その時鏡花が妾の袂を引っ張る。
鏡「姉さん、彼を助けなくて良いの。」
鈴『人虎と鏡花を護りながら戦って勝てる相手じゃない!』
鏡「でも!」
鈴『自分の命を擲ってまで救う価値のある奴か?!』
其処までまくし立てると鏡花が妾の袂を掴んでいた力をふっ、と緩めて何か決意したような顔をして妾の方を見向きもせずに芥川君の方に駆けていく。
芥「死んで他者に道を譲れ…!」
すると芥川君がこちらを見る。その視線の先には…ピストルを構えた鏡花が居た。
芥「武器庫から持出したか」
鏡「彼を逃がして」
芥「外の世界に触れて心が動いたか?」
そう言うと羅生門が鏡花の方に行く。鏡花が斬られる?!妾は咄嗟に夜叉を送り羅生門を受け止める。
カアァァァァァァァンッッッッッッッ!!!!!!
芥「鈴花殿か」
羅生門が妾の方に来る。夜叉が受け止める。それを繰り返すと芥川君と距離が出来てしまう。
その隙に鏡花が芥川君に首を掴まれ宙に浮いていた。
鈴『鏡花ッッッ!!!!!!』
芥「どん底を知っているか?」
鏡「かは……っ」
芥「其処は光の差さぬ無限の深淵だ。有るのは汚泥、腐臭、自己憐憫。遥か上方の穴から時折人が覗き込むが誰もお前には気付かない。ひと呼吸毎に惨めさが肺を焼く」
羅生門と夜叉がぶつかり合う。
カァァンッッッ!!!!!!
芥「外でお前を待つのはそれだ、鏡花。『夜叉白雪』は殺戮の権化。なぁ?鈴花殿?そんな者がマフィアの外で普通に生きると?」
後半ほぼ妾に云ってた気がする!
芥「人虎、教えてやるがいい。誰にも貢献せず、誰にも頼られず、泥虫のように、怯え、隠れて生きるのがどういうことか」
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