19:単独行動。 ページ19
.
「国木田、先程追加の連絡があった」
「追加の連絡、ですか」
港に向かうべく、支度を終えた頃、福沢は国木田を引き止めた。
社員たちはその会話に耳を傾ける。
「倉庫から数多もの銃声が聞こえ、数分後には静まったそうだ」
「というと？」
国木田は首を傾げた。
話の趣旨が理解できなかったのだ。
「我々が到着する前に、犯罪異能組織は鎮圧された」
「…まさか、」
福沢の言葉を聞いて太宰は目を見開いて驚いた。
彼は慌てて自分の携帯を確認した。
そして国木田も、遅れてそれを理解する。
「Aか」
「どうやら厭な予感が当たったみたいだ」
彼女の携帯にはGPS機能が取り付けられていた。
監視、といえば聞こえが悪くなるが、太宰が彼女の居場所を常に把握できるようにだ。
そしてその反応は、連絡があった通りの港付近の倉庫だった。
「太宰、国木田。Aの迎えと彼方の事は任せる」
福沢はそれだけ云うと、奥へと戻って行った。
「何も云う必要はないよ。兎に角あの子を連れて帰ってきておくれ」
与謝野は二人にそう声をかけた。
Aがした事は、決して褒められる事ではない。
結果として多くの人々の命を救ったとしても、己が命を失っては意味がないのだ。
故に、無闇な単独行動は許されない。
連絡があった倉庫に着くと、ほとんど全ては終わっていた。
死者はゼロ。
異能者たちは全て無事捕縛された。
齢十八の少女によって。
「A」
『太宰さん、国木田さん』
「帰るぞ」
探偵社に着くまで、彼らの会話は無かった。
太宰は気づいていた。
国木田が色々と云いたい事を抱えている事を。
だが彼は、一刻も早く彼女は連れ帰る事を最優先に考えたのだろう。
太宰自身は、Aに何と声をかければ善いのか判らなかった。
Aも口を開く事はなかった。
何故彼女がこんな行動をとったのか。
それは誰にも判らない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 473人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…！もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました！！ (2018年12月28日 10時) (
レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します！ 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です（笑）感動し過ぎて涙が止まらなかったです！！ 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう！ (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます！お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます！そう言って頂けると感激して泣きそうです！(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ろろみや。
| 作成日時：2017年10月31日 0時
