10*:写真撮影。 ページ10
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『写真?』
「そう、記念にさ」
突如として写真を撮ろうと言った太宰にAは首を傾げた。
そもそも彼女は写真など撮ったことがない。
だからこそ、どういう時にそれをするのかすらもよく判っていなかったのだ。
「何の記念だ?」
「四人がここに集まった記念。あるいは安吾の出張完了祝いか、不発弾処理祝い」
その他何でも、と太宰は織田の質問に答えた。
どうやら深い意味は無いようだ。
「幹部殿の仰せのままに」
安吾は肩をすくめながら云うと、鞄から写真機を取り出した。
それは、酷く使い古されていた。
『何するの?』
「おいでA」
安吾は苦笑しながら太宰とAの姿を撮影していた。
写真について詳しく知らないAは、どこか不思議そうな顔をしていたような気がする。
きっと、彼ら以外には判らないのだが。
そして、織田も安吾も写真を撮った。
「太宰、何故急に写真なんだ?」
「今撮っておかないと、我々がこうやって集まったという事実を残すものが何もなくなるような気がしたんだよ」
「そうですね、それにこれからAは大きくなりますし」
織田の問いに、太宰は曖昧だが答えた。
そして安吾は思いついたかのように付け足した。
確かに大人の三人はこれから大して変わらないだろう。
だが、子供のAは彼らの中で一番変わっていくのだ。
『また、撮りたい』
「きっとまた撮れるさ」
そんな言葉を交わしたが、彼らがその酒場で写真を撮る機会は二度と来なかった。
その日が、彼らの間にある目に見えない何か、失った空白によって存在を知ることができる何かを、写真に残すことのできる最後の機会だったのだ。
それは、四人のうち一人が、その後まもなく死んだからだ。
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ろろみや。(プロフ) - エンジョイ勢さん» うわわ、本当ですね!!!ご指摘、ありがとうございます!! (2017年8月18日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
エンジョイ勢 - 夢主ちゃん、めっさ可愛いですね。訂正させて頂きたいのですが33の今までの○○なら絶対云わないの今までが今でになってますよ?更新頑張ってください! (2017年8月18日 22時) (レス) id: 670574c7a9 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ムクさんさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2017年7月3日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
ムクさん - スッゴくおもしろいです。がんばってください (2017年7月3日 0時) (レス) id: 76af138a5e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - YYYさん» 応援ありがとうございます!読んで頂けて、嬉しいです!! (2017年6月4日 22時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年6月3日 23時