34:爆弾発言。 ページ34
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太宰が去っていった病室。
少しの沈黙の後、安吾が先に口を開いた。
「太宰くんに隠し事が出来るなんて、尊敬しますよ」
『隠し事だなんて人聞きの悪いこと云わないで下さいよ』
「でも事実でしょう?」
安吾の言葉にAは、うふふと笑った。
図星だったからである。
だが、彼女とて好きで太宰に隠し事をしているわけではない。
やるべき事があるため、やむを得なくだ。
「結構うまくやってるみたいじゃないですか」
『自分でも驚いてますよ。太宰さんに、「君の情報は全く見つからない」って云われた時はひやっとしましたけど』
流石は特務課ですね。私の過去は綺麗さっぱり消えてます、と彼女は嬉しそうに云った。
彼女には、特務課に大きな借りがあるのだ。
「今、君の正体を知っているのは?」
ヘラヘラとしていたAは、それを聞いた途端、真面目な表情になった。
『特務課の種田長官と安吾さん、森さんに、社長、乱歩さんだけです』
探偵社員である横光Aが、偽の人物であるわけではない。
ただ、彼女の目的の全てが「社員として人助けをする」であると云うわけでもない。
「探偵社に入った目的は?」
『人助けをしたかったから、と云ったら?』
先程彼女が云った通り、彼女の正体を知っているのは五人である。
だが、彼女の本当の目的を知っているものはいない。
人助けがしたい、とは主な目的ではない。
「昔はそうだと思っていましたが、今はそうとは思えません」
『何故です?』
「よくよく考えてみたら判る事です。貴方の経歴から考えてあり得ないじゃないですか」
『あはは、それを云ったら太宰さんもじゃあないですか』
Aは無邪気に笑った。
安吾にバレてもなお、真実を話す気はさらさらないらしい。
「でもまぁ、貴方の最近の行動には感謝しています」
『そうですよね。異能組織の取り締まり、多少は楽になってますよね判ります』
「遠慮ってものを知っていますか?」
そうは云うものの、彼女の活動が特務課にとって吉になっているのは確かだった。
安吾は、面倒臭いとでも云うように深い溜息をついた。
『じゃ、私も戻ります』
「えぇ、また今度」
病室を出かけた時、Aは思い出したかのように振り返り、一言残した。
『与謝野さんの治療って、解体されるんですよ?』
最後の最後に、爆弾発言だった。
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ろろみや。(プロフ) - のりばやしさん» 本当ですか?!是非ともよろしくお願いします! (2017年12月19日 7時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 主人公さんをかかせていたたけないでしょうか? これからも更新がんばってください!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - 龍愛さん» ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!更新、頑張ります! (2017年10月19日 0時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
龍愛(プロフ) - ろろみや。様の作品を初めて拝見させていただきました!とっても面白いです!!私の好みの作品です!更新、頑張ってください! (2017年10月18日 22時) (レス) id: a85de7e0fb (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2017年10月16日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月9日 1時