検索窓
今日:5 hit、昨日:7 hit、合計:265,705 hit

34:爆弾発言。 ページ34

.




太宰が去っていった病室。



少しの沈黙の後、安吾が先に口を開いた。




「太宰くんに隠し事が出来るなんて、尊敬しますよ」


『隠し事だなんて人聞きの悪いこと云わないで下さいよ』


「でも事実でしょう?」





安吾の言葉にAは、うふふと笑った。



図星だったからである。



だが、彼女とて好きで太宰に隠し事をしているわけではない。



やるべき事があるため、やむを得なくだ。




「結構うまくやってるみたいじゃないですか」


『自分でも驚いてますよ。太宰さんに、「君の情報は全く見つからない」って云われた時はひやっとしましたけど』





流石は特務課ですね。私の過去は綺麗さっぱり消えてます、と彼女は嬉しそうに云った。




彼女には、特務課に大きな借りがあるのだ。





「今、君の正体を知っているのは?」




ヘラヘラとしていたAは、それを聞いた途端、真面目な表情になった。




『特務課の種田長官と安吾さん、森さんに、社長、乱歩さんだけです』




探偵社員である横光Aが、偽の人物であるわけではない。




ただ、彼女の目的の全てが「社員として人助けをする」であると云うわけでもない。





「探偵社に入った目的は?」


『人助けをしたかったから、と云ったら?』





先程彼女が云った通り、彼女の正体を知っているのは五人である。




だが、彼女の本当の目的を知っているものはいない。




人助けがしたい、とは主な目的ではない。






「昔はそうだと思っていましたが、今はそうとは思えません」


『何故です?』


「よくよく考えてみたら判る事です。貴方の経歴から考えてあり得ないじゃないですか」


『あはは、それを云ったら太宰さんもじゃあないですか』




Aは無邪気に笑った。



安吾にバレてもなお、真実を話す気はさらさらないらしい。





「でもまぁ、貴方の最近の行動には感謝しています」


『そうですよね。異能組織の取り締まり、多少は楽になってますよね判ります』


「遠慮ってものを知っていますか?」




そうは云うものの、彼女の活動が特務課にとって吉になっているのは確かだった。




安吾は、面倒臭いとでも云うように深い溜息をついた。




『じゃ、私も戻ります』


「えぇ、また今度」




病室を出かけた時、Aは思い出したかのように振り返り、一言残した。




『与謝野さんの治療って、解体されるんですよ?』




最後の最後に、爆弾発言だった。



.

35:敦と芥川。→←33:見返りと取引。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (296 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
403人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ろろみや。(プロフ) - のりばやしさん» 本当ですか?!是非ともよろしくお願いします! (2017年12月19日 7時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 主人公さんをかかせていたたけないでしょうか? これからも更新がんばってください!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - 龍愛さん» ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!更新、頑張ります! (2017年10月19日 0時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
龍愛(プロフ) - ろろみや。様の作品を初めて拝見させていただきました!とっても面白いです!!私の好みの作品です!更新、頑張ってください! (2017年10月18日 22時) (レス) id: a85de7e0fb (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2017年10月16日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月9日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。