33:見返りと取引。 ページ33
.
「ハァイ安吾!元気かい?」
太宰は、満面の笑みで病室のドアを勢いよく開けた。
中にいた安吾は眉間にしわを寄せ、嫌そうに彼を見た。
そして彼に冷たい眼差しを送る人物がもう一人。
太宰の後ろに立っているAだ。
『うわ、結構な怪我ですね。私だけ治っちゃってすみません』
「いえ別に。それよりもその見舞い品は何ですか?」
『人参がお好きと聞いたので、人参ですが』
「誰ですかそのデマを流したの」
敢えて太宰に触れることなく会話を続けた二人。
だが、太宰はそんなことは気にする様子もなく用件を伝えた。
まず、太宰が云ったのは、安吾の怪我を与謝野の異能で治癒すること。
それを聞いた安吾は、その見返りは戦争の手伝いだと解釈した。
「実は、探偵社員が一人、軍警に捕まっている。彼女を助けたい」
「あぁ、35人殺しですか」
安吾は太宰が誰の事を云っているのかをすぐさま理解した。
鏡花は危険異能者を隔離する無人機にて拘束中。
助けるには特務課の手を借りるのが一番手っ取り早い。
「確かに、特務課なら超法規的な司法取引による免責も可能です。
その少女が本当に探偵社員ならば、ですが」
安吾のその言葉に、太宰は黙った。
確かに鏡花は入社試験を通過していない。
故に、正確に探偵社員になったわけではない。
『人を殺せば、どんな理由であれ、殺人ですからね』
「そう云うことです」
Aの云う通り、殺人は殺人である。
探偵社と特務課が協力関係にあったとしても、大量殺人犯に特赦を与えるのは安吾には不可能だ。
それでも安吾は、帰ろうとした太宰に声をかけた。
「太宰くん。治療と引き換えに協力する「取引」、確かに承諾しました。だから教えて下さい」
安吾は太宰をまっすぐ見ていた。
「正体不明の車に突っ込まれた時、何故か僕の席のエアバッグだけ開かなかったんですが、、理由をご存じありませんかねぇ?」
その問いに太宰は振り返り、小さく笑った。
「私は戻るが、君はどうするのだい?」
『…私はもう少し、此処にいます』
それだけを云って去っていった太宰。
彼が安吾の問いに答えることは無かった。
.
403人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ろろみや。(プロフ) - のりばやしさん» 本当ですか?!是非ともよろしくお願いします! (2017年12月19日 7時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 主人公さんをかかせていたたけないでしょうか? これからも更新がんばってください!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - 龍愛さん» ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!更新、頑張ります! (2017年10月19日 0時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
龍愛(プロフ) - ろろみや。様の作品を初めて拝見させていただきました!とっても面白いです!!私の好みの作品です!更新、頑張ってください! (2017年10月18日 22時) (レス) id: a85de7e0fb (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2017年10月16日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月9日 1時