18:知らない話。 ページ18
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『折角の休みなのに忙しいな、』
太宰と別れたAは急いで港へ直行し、近場の知り合いに小さなボートを借りて海へ出ていた。
休みの日に限ってやらねばならないことが多いのは何故だろうか。
遠くを見ると、火に包まれた輸送船。
その近くが彼女の目的地とする場所だ。
『敦くんも、手加減知らないのかな』
まぁ、手加減なんてしたら殺されてるか、と外套を脱いだAは海へ飛び込む。
そして掴んだ人物、芥川をボートに雑に投げ込んだ。
その後、自分も乗り込み、急いで港へ引き返す。
『生きてるみたいですね、芥川さん』
「…お前、は」
『手当てをする気はありませんよ』
小さく聞こえた呼吸音に、Aは言葉を発するが、視線は進行方向を向いたままだ。
かろうじて意識のある芥川は、ぼやける視界の中、彼女の後ろ姿を眺めた。
「探偵社員の、お前が、、何故僕を、助ける」
『太宰さんの計画に貴方が必要だからです』
芥川は、サラッと答えたAに、それ以上返す言葉は見つからなかった。
勿論、彼女の行動は太宰によって仕組まれたものではなく、ただの独断だ。
「お前は、あの人に、、似ている」
『はい?』
不意に芥川から発せられた言葉に、Aは少し振り向いた。
彼は目を瞑って今にも消え入りそうな声で続けた。
「昔、、太宰さんの、隣にいた、」
Aはもう、芥川の方を見てはいなかった。
それでも彼は、ゆっくりと話を続けていく。
「それなのに、マフィアの人間ではなかった、、あの女性、」
意識が朦朧としているからなのかもしれない。
過去の話など、Aにしたところで何の意味もない。
それでもAは、黙って話を聞いていた。
「僕も、あの人のことは、、認めていたのに」
港にボートをつけたAは、力任せに芥川を陸に引き上げる。
その間も、芥川が黙ることはなかった。
「何故、突然いなくなってしまったのですか、」
『……もう少しすれば、きっと樋口さんが来ますよ』
彼を壁に寄りかからせ、座らせたAはそそくさとその場を離れる。
樋口に見つかっては大変だからだ。
歩き続ける彼女の頭からは、芥川の悲しそうな声が消えなかった。
『…知らない人の話するの、やめて下さいよ』
Aの呟きは、広い海へと消えていった。
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ろろみや。(プロフ) - のりばやしさん» 本当ですか?!是非ともよろしくお願いします! (2017年12月19日 7時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 主人公さんをかかせていたたけないでしょうか? これからも更新がんばってください!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - 龍愛さん» ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!更新、頑張ります! (2017年10月19日 0時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
龍愛(プロフ) - ろろみや。様の作品を初めて拝見させていただきました!とっても面白いです!!私の好みの作品です!更新、頑張ってください! (2017年10月18日 22時) (レス) id: a85de7e0fb (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2017年10月16日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月9日 1時