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「どう考えても、1年に務まる任務じゃない」
「僕は燃えてるよ! 夏油さんにいいとこ見せたいからね! ね、A!」
『私は別に燃えてない……けど、たまにはこういうのも悪くないかな』
「……似てきてる、灰原に」
那覇空港の警備。
確かに状況が状況。
七海の言う通り、1年には荷が重いような気がしなくもない。
でも、悪い気はしなかった。
というか本当は3人なら何でもよかった。
どんな任務でも、苦にならなかった。
思えば私は、人が嫌いだったのだろう。
理解してくれる人もいなければ、黙って側にいてくれる人もいない。
家族はお前は強いから大丈夫、と理想を押し付けた。
売られた喧嘩を買い続けるような人間で、友達なんていなかった。
だからだろう。
だから、普通より強くて側にいてくれようとする灰原と七海の隣が心地よかったのだと思う。
『灰原も七海も、強くてよかった』
「Aが言うと嫌味にしか聞こえない」
「僕たちAより等級下だけど?」
『そういうことじゃないよ、灰原』
強くなければ呪術師なんてやってられない。
そう、一般人と同じでは。
私たち呪術師はきっと、弱き者を守るために戦う。
私はそうは思わないけれど、灰原ならそう言うと思う。
優しい人だから、七海も。
私たちは、強い人。
どこかの誰かに選ばれた、守る側の人間。
人は嫌いだ。
これからもずっと、好きにはなれない。
なれるのは、特別な人だけだ。
でも、守れるようになりたいと思う。
私を理解できなかった家族も、友になれなかった人たちも。
みな平等に、人間だから。
自由に生きていく、権利があるから。
私はその権利を、守っていければいいと思う。
「待ってろよぉ、今に一級術師になってAに追いついてやる!」
「そんなすぐには無理でしょう」
『その前に私が特級術師になるから』
「それも簡単にはいかないでしょう」
いつの間にか、強さに囚われることはなくなっていた。
強いことは悪いことではないと、思えていた。
強者であることが、重荷だった。
強者であることが、孤独にした。
だけれど強者であることが、私に違う価値観をくれた。
好きという感情を知った。
教えてくれたのは、灰原だろう。
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灰原。
実際私は君よりも七海よりも強いけど。
強い2人ならずっと一緒にいてくれる気がして、初めて人を好きだと思えたよ。
まあ、灰原と七海の2人だけ、だけどね。
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九鬼青蓮 - 感動しました。心理描写が丁寧で、心を打たれました。素晴らしい作品だと思います。 (2022年4月10日 23時) (レス) @page12 id: 8f571d995d (このIDを非表示/違反報告)
青葉 - すごく感動しました。大好きです (2022年1月4日 1時) (レス) @page12 id: 72f2f340c8 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました。ありがとうございます (2020年12月16日 2時) (レス) id: 23cfa4baa4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2020年12月15日 22時