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日差しが心地良い、そんな日だった。

『やぁ、作之助。久しぶりだね。
実はね、こっちに来るのに4年もかかちゃったの』

太宰とAは二人で、作之助の墓に来ていた。

お墓参りとは違い、彼らにとってはただ純粋に、織田作之助に会いにきているだけだった。
彼がそこにいないことはわかっている。だが、ここが唯一、彼らと作之助を繋ぐ残された場所のように感じられていた。

『君の世界は本当に美しいね。空は絵の具で塗ったみたいに綺麗な青で、街は人々の活気で溢れてる』

Aは本当に、そこにいる誰かに話しているように見えた。
楽しそうで、嬉しそうで、幸せそうだった。

太宰もそんなAの様子を、何も云わずにそっと微笑みながら見ていた。

『私の世界の戦争は終わっただろう。我々の負けでね。正直なところ、4年前、すでに結果は見えていたから。

でも、坂口は生きてるよ。何せ彼は、私よりいくつも頭が良くて、逃げ足がはやかったからね』

坂口が生きていると云う断言。
そこからは、長年共に闘ってきた彼らの信頼が見えた。

『私は、作之助から貰った天衣無縫(奇跡)で、太宰を救うことができた』

Aは墓の前にしゃがむ。

一度は救うことのできなかった太宰を、今度は救うことができた。

彼女は満足そうに、墓石に触れた。



『私をこっちの世界に導いてくれてありがとう。

君がこっちの世界でそうしたかったように、、私があっちの世界でそう願ったように、平行宇宙の同じ織田(一つの個体)として、太宰の隣で生きていくよ』

太宰を導いて、死んでしまった織田作之助。

彼だってきっと、望んで死んでいったわけではないのだ。やらねばならないことができた。だから結果的にこうなった。

しかし、小説家になることを夢に見ていた。生きた未来を信じていた。友人と歩む未来を願っていた。

作之助の叶えられなかった願いは、叶えることができなかったAに引き継がれる。

Aは自分の願い、そして作之助の想いを持って、太宰と共に生きていくのだろう。

『今度は死なせたりしませんから、覚悟してくださいね』

「それは困ったなぁ」

柔らかな風が、彼らを包み込んでいた。

またねと作之助に背を向けて、Aは差し伸べられた手を、そっと握った。



神秘的なしるしと解釈できるその言葉。

奇しき跡と書くそれを、人間は " 奇跡 " と呼ぶのだ。



ー FIN ー

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- 感動しました!完結おめでとうございます! (2018年11月18日 15時) (レス) id: 1914631717 (このIDを非表示/違反報告)
ANN(プロフ) - 感動しました。感動しました。完結おめでとうございます(*>∀<) (2018年11月18日 15時) (レス) id: 0ad3bbb3df (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - 完結おめでとうございます(^-^) (2018年11月18日 13時) (レス) id: e1d97e38a0 (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - すごい、こんなに感動したのは久しぶりです。 (2018年11月18日 13時) (レス) id: e1d97e38a0 (このIDを非表示/違反報告)
琴吹(プロフ) - 最高でした。 (2018年11月18日 12時) (レス) id: 0c8e621b62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2018年11月17日 23時

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