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『作之助が死んだのと、私の世界の太宰が死んだのは同時期です。つまり4年前。
そして私があの世界を出たのもその時です』

「じゃあ君は、4年間一体何を?」

『あちらの世界を出た途端にこっちに来るのは不可能でした。
今よりも非現実的な話ですけど、こちらとあちら繋ぐ、どの世界とも相容れない時空を超えるのに4年かかってしまったんです』

そして特殊な時に流されて4つ若返りました、とAは笑う。

本来ならば4年前、太宰が18の時にAは23。そして今、太宰が22であるため、彼女は27である。

彼女と作之助は同一人物であるが故に、年齢も同じ。
そのはずなのに、若返ってしまったため、現在の太宰よりも年下になってしまったのだ。

「織田作は、どうして君をこの世界に誘ったのだろう」

太宰はぼそりと疑問をこぼす。

死んでしまった人間は、答えてはくれない。もちろん、同じ織田だとしても個体同士が全ての感情、記憶を共有しているわけではないため、Aも彼の本意を知らない。

だがそれでも、Aが一番、作之助を理解しているのは間違いなかった。

『私を救おうとしてくれたのはわかっています。でも、それが一番ではないんじゃないかなと、私は思っています』

「一番の理由?」

作之助の願いが、結果としてAを救った。
死んでしまった作之助には叶えられない何かを、彼はAに託したのだ。

『貴方が心配だったんですよ。身分、立場を超えて友人だった貴方が、自分がいなくなった世界でちゃんと生きていけるのか、それを私に見届けて貰いたかったんだと思います』

「……そうか」

太宰はそれ以上の言葉を紡がなかった。

それ以上、云う必要もなかったのかもしれない。

『結果的に私がたどり着いた世界はとても美しかった。
未だに乗り越えられていなかった悲しさと、美しさへの感動で泣いているところを、敦くんが見つけてくれたんです。

彼を見てすぐわかりました。白髪に、あの真っ直ぐな目。別部隊ではあったけど、彼はこの世界の中島なのだと』

これが始まり。全ての起点。

「そして君は、探偵社にたどり着いた」

『そして私は、太宰治に出会いました』

4年の時を経て結びついた糸。

ふたつの世界の、世界線を越えた、友情の物語。

" 奇跡 "(天衣無縫)は、持てる力のすべてを以って、この未来を見ていたのかもしれない。


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- 感動しました!完結おめでとうございます! (2018年11月18日 15時) (レス) id: 1914631717 (このIDを非表示/違反報告)
ANN(プロフ) - 感動しました。感動しました。完結おめでとうございます(*>∀<) (2018年11月18日 15時) (レス) id: 0ad3bbb3df (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - 完結おめでとうございます(^-^) (2018年11月18日 13時) (レス) id: e1d97e38a0 (このIDを非表示/違反報告)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - すごい、こんなに感動したのは久しぶりです。 (2018年11月18日 13時) (レス) id: e1d97e38a0 (このIDを非表示/違反報告)
琴吹(プロフ) - 最高でした。 (2018年11月18日 12時) (レス) id: 0c8e621b62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2018年11月17日 23時

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