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きっとそれは、僕の愛が足りなかったんだ。

貴方はきっと、そう言うだろう。
もっと君を愛せていたら、こんな結末にはならなかった、と。
だって貴方は、誰よりも優しくて、誰よりもお人好しなのだから。

でも、そうは言わないでほしい。
未来の貴方を否定しないでほしい。

私は愛されていた。
父は血のつながりもない私を、本当の娘のように愛してくれたのだ。

確かに私は満たされていた。
未だ嘗て得たことのない程の優しさに困惑したこともあったけれど、子供ながらに単純に、私は嬉しかったのだ。

だからどうか、自分を責めないでほしい。
貴方は悪くないから。悪いのは全て、私だから。
貴方がどんなに愛してくれても、私は貴方を殺すのだから。


「……僕がもっとしっかりしていれば、君を助けることも」

『違います。壊したのは私だけど、私は貴方と過ごした五年間、確かに救われていました』



私は父に拾われて、救われた。助けられていた。
救われるべきなのは、父なのに。
近い未来に罪を犯す私が満足感を得ていた。


赤ん坊の頃、私の面倒を見ていた男は " ツシマ " という。
漢字は忘れてしまったけれど。

ツシマを殺せば自分も死ぬと知ったあの日。
怖くて死んで償うこともできなかったあの日。
私は、可能性の低い奇跡に縋って、過去へ戻る計画を考え出した。
思っていた何倍も時間がかかって、気づけば私は十四になっていた。
初めて出会った時の鏡花さんと同じ歳だった。

まず、ツシマと私の繋がりを切る。
父の死から五年、それは案外簡単にできた。
「探偵社に見つかった。いずれ殺される」と言えば、彼は運命共同体であるという設定を外した。
元々反逆を防ぐためのものだから、そんなに意味はなかったのだろう。

望んだように組織から追放された私は、それから武装探偵社に向かった。
無知な自分ではどうにもできないから、力を借りに。
まあ、話を聞いてもらえるまでに三年もかかったのだけれど、それは一応想定内だった。

私は一つの提案をし、探偵社の助力を得る。
太宰さんと乱歩さんを主軸に、過去へ戻ってからの計画を立てた。
谷崎さんと国木田さんが時空を越える異能を持つ人間を探し出してくれた。
宮沢さんが父と鏡花さんについて教えてくれた。
与謝野さんがシャツとスカートを貸してくれた。

二年が経ち、十九になった頃。
父のネクタイをして、ブーツを履いて。
鏡花さんの携帯を握りしめて。

福沢さんに背中を押され、私は過去へと飛んだ。

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砂木雲雀 - 感動しました…!久しぶりにとってもいいお話を読めた気がします。ありがとうございましたぁあ…!!! (2019年6月23日 14時) (レス) id: f363e24a01 (このIDを非表示/違反報告)
真綺 - めっちゃ感動しました!! ありがとうございました!! (2019年6月23日 13時) (レス) id: 06efcbf80c (このIDを非表示/違反報告)
柊まふ(プロフ) - とても 泣きました……!神作品を、ありがとうございます (2019年6月23日 12時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2019年6月23日 2時

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