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「お前が死なずとも、奴の駒になった人間を救う手はあるだろう」
『ありますよ、もちろん。例えば与謝野先生の異能があれば、私は助かるかもしれません』
選択肢としては、無くはなかった。
未来の太宰はその方法も、彼女の手帳に記していた。
だがAが認めなかったのだ。
そして誰も、止めなかったのだ。
「それならそうした方が良いんじゃないですか？」
『私はそうしたくない。ですが皆さんは救おうとして下さるでしょう。
ですから言いましたよね？ 時間が稼げればそれで良いと』
ここに現れた彼女は、最初の乱歩の言葉にそう言った。
誰もそれに深い意味を感じてはいなかったが、どうやらそれこそが目的だったよう。
必要だったのは、足止めだ。
彼らは間違いなく、武装探偵社である。
ならばきっと、Aを救おうとするだろう。
『私の異能は、分裂です。そして分裂したもう一人の私が、子供の私を撃ちました』
どうやら誰にも邪魔されず、意思を持たない彼女の異能は己を撃ったようだ。
何の悲しみも持たず、一つも感情を得ずに。
子供の彼女はもうすぐ死ぬだろう。
愛を得られぬまま、何も知らぬまま。
ただ自分に似た誰かに撃たれて死ぬのだ。
『与謝野先生。己の命とはいえ、一つの命を奪うことを許してください』
「……何も言わないでおくよ」
彼女は初めから死にたかったわけではない。
だってもしその気持ちがあったならば、既に実行していたはずなのだから。
償いで死ぬのは、間違いではなかったはずだ。
でも、心のどこかでそれ以外の償いの方法を探していた。
『納得して頂けないのは、わかっています。
でもただ一つ、私の心は死したときのみ救われることをご理解いただければ幸いです』
二人を殺したから、どうにかしなければと思っていたのに。
感じていたのは、許されたいという気持ちだった。
だからこそこの結末に辿り着いたのだ。
人を殺すには、殺される覚悟がなければならない。
結局死んで償う方法しか見つからなかったし、自分を許してくれる人はもういなかった。
これは、解放に近い。
目的は自分が救われること。
そして探偵社に持ちかけた、一つの提案。
『私は自分が楽になることを求めてここにいます。ですが敦さんと鏡花さんの幸せを願っているのも本心であると、どうか信じてください』
いつまでも、子供のように甘えているのは気づいていた。
それでも、愛してくれた二人が幸せになることは本当に心からの願いだった。
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砂木雲雀 - 感動しました…！久しぶりにとってもいいお話を読めた気がします。ありがとうございましたぁあ…！！！ (2019年6月23日 14時) (
レス) id: f363e24a01 (このIDを非表示/違反報告)
真綺 - めっちゃ感動しました!! ありがとうございました!! (2019年6月23日 13時) (レス) id: 06efcbf80c (このIDを非表示/違反報告)
柊まふ(プロフ) - とても 泣きました……！神作品を、ありがとうございます (2019年6月23日 12時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろろみや。
| 作成日時：2019年6月23日 2時
