75:__してもいい? ページ29
お風呂に入って、何もかも終わらせてから。俺はベッドの端に座って携帯を触っているAの、パジャマの袖を少し引っ張った。
「してもいい?」
「…へ?」
何をするんだって話だ。だってまだ1度もしていない。だから何を?って。喋らず互いにそういう表情をして念を送る。
「してもいい、というかまだしたことないですよね」
と、俺はそう言っている彼女の頬を優しく手で包み込んだ。ベッドの上に座り、あぁ俺と同じ匂いがするとくらくらしてしまいそうだ。
「あ、うん。とりあえず聞こうと思って」
「なるほど」
「で、いい?」
「…いい、ですよ」
実はまだ1度もしたことないのだ__キスを。
ここまでで何か勘違いをしている人はいるかもしれない。しかし順序というものがある。彼女がそういう気になるまでずっと俺は待つと決めている。
「…っ」
とりあえず目を閉じている彼女の唇に一瞬触れるだけのキスをする。目を閉じているから俺はガッツリ目を開けて彼女の目元を見ることができた。綺麗だなというのが感想。
「…柔らかかった。気持ち良い」
「それは心の内に閉まっててください」
「すみません」
びっくりして、頬は赤くて、少し息が上がっているAは狙って言っているのかどうなのか。口に出して感じたことをそのまま言う。
俺じゃなかったら襲ってますが、今の状況。
「!?…ん」
今度は少し長くしてみた。
「ドキドキする?」
「ドキドキ、しますよ」
初々しい感じが可愛すぎる。本当に小動物みたいで可愛い。好き。大好き、という気持ちが溢れ出す。
「!?え、なんですか」
「…」
良いよねもうずっと我慢しているし、と座っている彼女を押し倒した。両手は指まで絡ませ、馬乗りの状態になる。
__待て。落ち着け、俺。
「ごめん。今のは忘れて」
「何、するつもりだったんですか」
我に返って、このままでは駄目だと両手を離す。
「もっとドキドキする“これ”」
彼女の唇に触れながらそう言った。
「…おやすみなさい」
「待ってごめん。怒った?」
「怒ってないですよ。ただ、」
「“ただ”?」
「そのまま、“これ”…しても良かったのにって思っただけです」
「え」
外側を向いて寝ようとするA。少し照れながら、自分の唇に触れて言う。その仕草にいやらしく感じてしまう。
「今日はもうお休みになってくださいね」
「俺眠れないんだけど」
「寝てください」
「いや無理だって」
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作者名:のん | 作成日時:2023年3月11日 19時