70:一瞬にしてあぁこういう人だったねって思った ページ24
今日は調子が良かった。
伊月くんはくすっと笑って、大人っぽい雰囲気が出ていた。一応私の方が年上なんだけどなと年齢を疑ってしまうほどに。
「榎本さん、何か良いことがあったんですね」
「え、まぁ…うん。そんな感じ」
結局昨日は泣いたまま寝てしまい、翌日目を覚ましたら淳弥さんの腕の中だった。焦ったし、抜け出そうとした。だけど人の温もりを感じることができて良かった。
…なんて言えない。
人肌恋しいのかな私。
*
帰った時には、雨は降っていなかった。しかし19時になってから雨が降り始め、更に雷もうるさく鳴っている。天気予報通りだ。
「雨すご」
「雷もすごいですよね」
「もし停電になったらまずいから今日は早めにご飯食べてお風呂に入ろっか」
「そうですね」
と、淳弥さんは夕食の準備をするため、キッチンの方に行く。私は彼の後ろについていき、茶碗やお皿の準備を始める。
「夫婦みたいだね」
「黙ってください」
「お風呂上がりま___」
ご飯を食べて少し急いで先にお風呂に入った。そんなに急がなくていいよと言われたが、そもそも先に入る時点で申し訳なさ(後輩として)がある。
「__“あなたと出会って、幸せを感じた”〜」
「…」
リビングに来ちゃ駄目だったようだ。
淳弥さんは、私の歌を口ずさみながら窓の前にしゃがんで何かをしているみたい。
なんというか、自分ではない他の人が私のを歌っているのを聞くと恥ずかしいと思ってしまう。
「あ」
「…」
「ごめん本当にごめんそんな哀れみの目で見ないで」
後ろからそっと覗いてみると、窓にハートのついた傘に私と彼の名前があった。…書いたんだ。
「こういうの書く機会ないでしょ?」
「…子供か。そういうの学生がやりませんか」
「年齢なんて関係ない」
「ドヤ顔で言わないでください」
彼のすべてを理解しようとは思っていないけれど、予想もつかないなこれ。
「!」
淳弥さんの少ししょんぼりした顔を見ながら、ちょうど雷が光ってゴロゴロと音が鳴る。肩がビクッと上がり、心臓に悪い。
「今の雷すごかったな」
彼は窓から光った場所を見ている。
「A?」
「ナンデスカ」
「雷、怖い?」
「…だったらなんですか」
そそくさと寝室に逃げようとするも無理な話。
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作者名:のん | 作成日時:2023年3月11日 19時