71:いいから人の話は聞け ページ25
怖いものはなんですかと聞かれて、雷ですと即答するくらいに雷が苦手である。
今日は早く寝て雷のことを忘れようと思っていても、腕を掴んでニヤけている彼の顔を見て顔色を悪くした。
「意外と子供っぽいところ多いよね」
「…まだ20代ですし」
「関係あるかそれ」
離してくれ、と目で訴える。それでも離してくれない。
「お風呂入ってくるね」
「はい」
10秒ほど経ってからだろうか。淳弥さんは私の腕から手を離してリビングを出ていく。
このまま何もなければいいけど、と思ったが、“何かが起きる“可能性の方が高いと感じた。同時に嫌な予感も。
私はベッドへ避難することにした。
「…虫?」
「人間です」
頭から足まで毛布に包まってベッドの上にいたせいで、くすくすと笑いながら毛布を取ろうとする淳弥さん。取らないで。引っ張らないで。
「あ、起きてたんだ。大丈夫?」
「はい」
ここ数分は、雷は落ちていないようで。ただし雨はもっと酷くなっている。
ベッドは1人用なのでくっついて寝るのが当たり前となっている。
「手繋ぎたいです」
「いいよ」
互いに内側を向き、片手だけでいいのにと思ったが、両手をぎゅっと握ってくれる。お風呂上がりだからか、彼の手は温かい。
「今まではどうしてたの」
「すぐ布団の中に潜りました」
「何それめっちゃ笑う」
*
雷が落ちる音が耳に入るたびに私は毎回反応して、彼が笑って…の繰り返し。そういうわけで眠れない。少し喋ることにした。既に明かりは消したので、暗闇の中で会話をするのがなんか新鮮。でも彼の顔は薄っすらとわかるのが難点。
「…こうやって一緒に寝ると睡眠の質が高くなるらしいよ」
「そうなんですね。…だから悪い夢を見なくなったのかな」
「人肌が良いんだね」
「ですね」
と、他愛ない会話をする。
他愛ない会話だからこそ、ふとした時に変なことを喋るのが彼だ。
「Aが起きるまで寝顔を見るの楽しいんだよね〜」
「え」
知らない事実を言ってくる。寝ぼけているのかどうかは知らない。逆に私は目が覚めた。雨は落ち着いてきているみたいだけど。
「しっかり撮ってるんだよ」
「盗撮ですよ」
「可愛いんだよね、寝顔」
「人の話を聞いてください」
早く写真を削除しなければ。
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作者名:のん | 作成日時:2023年3月11日 19時