検索窓
今日:9 hit、昨日:25 hit、合計:63,113 hit

67:敗北を感じた人間 ページ21

「へぇ、オリジナルか」

「はい。色々力が入っているみたいで、ラジオやSNSを中心にやっていくみたいです。結構動画を撮ったので、…あとから投稿されるかな」

「頑張ってるね」

「!はい」


(彼の)家で、やっと情報が出たのでオリジナルアニメに出ることを伝えた。まだ放送は先なのでこれから収録していくことになる。

淳弥さんは公式アカウントを確認し、最初に投稿された動画を見る。


「……へぇ」

「?」


短く、普段よりも低い声で返事をした様子が気になる。
…私はいつも通りだと思うけど。


「そういえば、淳弥さんってボイトレいつしてるんですか」

「Aがお風呂に入ってる間か、いない時」

「え」


…最低でも1時間はするって言ってたよねこの人。







現場に着いた時はしっかりしていて、笑顔が素敵な男性だと思った。
しかし、アフレコが始まってから、雰囲気というか空気が一瞬で変わった。



そう、圧倒的な差を感じた。これが所謂天才というもの。

活動期間は関係ない。
今、隣にいる彼は天才だと。


私よりも、全然____。


「お疲れ様です!」

「お疲れ」


休憩時間になって、伊月蓮くんからお茶を貰う。一口飲んで、はぁ、と短く溜め息をついた。


「__榎本さんのお芝居、心打たれちゃったんです」


私が出演している作品を見ていたようで、純粋に裏表のないまだ少し幼い笑顔で、そう言ってくれた。言ってくれたのに。


「ありがとう」


素直に喜べない自分がいる。

だって彼の方が上というのはわかっている。
これから先この業界を引っ張っていくんだと。



___敗北を感じた。




「ラジオも始まるらしいですね」

「そうだね」

「僕、ラジオも初めてなので榎本さんに迷惑かけてばっかりですけど…」

「ううん。これから少しずつ頑張っていけばいいよ」


…迷惑って。私の方が迷惑をかけている。

収録までに何度も台本を見返した。原作がないオリジナルだからキャラクターがどう話すのか、試行錯誤をしながら考えていたのに。
普段よりもリテイクを多くしてしまった。


「……いいなぁ」


彼を羨ましく感じる瞬間が今日だけでもたくさんあった。

68:だって見せたくなかった→←66:そういう季節だから



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (160 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
378人がお気に入り
設定タグ:榎木淳弥 , 男性声優 , 声優   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:のん | 作成日時:2023年3月11日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。