37 思い返せば ページ41
心当たりはあった。
なぜあんなにも自分を頼れと言ってこだわっているのか。
確か、私が小学校高学年だった頃だと思う。
「うぅ…。」
その日は学校が終わるのが早かった。そのため、近くの公園で淳弥と一緒に遊んでいた。
ブランコに乗ったり、滑り台とか。
たくさん遊んだ後、公園にある時計を見てもう夕方だったので、じゃあ帰ろうかとした時。私は何もないところで転んでしまった。
膝からは血がポタポタと流れている。
淳弥は焦ることなく、水道の水で丁寧に洗ってくれた。
一旦ベンチに座った後、彼はズボンのポケットから絆創膏を1枚取り出した。
「なんでばんそうこ持ってるの?」
「持ってちゃだめなの?」
「ううん。」
あの時から女子力は高かったと思う。
逆に私は絆創膏とかは常備していなかった。
今思えば、私が転ぶのを予想していたかのように準備していたのかもしれない。
「乗って。」
「歩けるよ!」
「念のため。」
それから普通に歩けるけれども、彼はしゃがんで私をおんぶすると言う。
「…ごめん。」
「いいよ。」
拒否権はなかった。私は大人しくおんぶされた。
「…お兄ちゃんみたい。」
「おれは弟だよ。」
「なんでお姉ちゃんなんだろう。」
「先にAが生まれたから。」
ゆっくりとしたスピードで家へ帰る。
何も話すことはなかったが、ぼそりと言った私の一言で会話が進む。
“それ”はもちろんわかっていた。
あの時、中身のことに関して悩んでいたんだと思う。
「よくまちがえられるもん。」
「何が?」
「じゅんやくんの方がお兄ちゃんじゃないの?って。」
「ふーん。」
どうでもよさそうな感じだった。
「他の人のことはどうだっていいよ。おれのお姉ちゃんはAなんだから。」
正論だった。他人は他人だ。気にする必要はないと。そして姉弟はこうであると、そう淳弥は言った。
「それに年上だとしても、たよればいいでしょ?おれを。」
「…うん。」
“頼られて嫌だなって思う人なんていない”と。年齢は関係ないと。
「わかった!すぐじゅんやをよぶ!」
「あの時からあんな感じだったなぁ。」
思い返してみれば、小学生と言えど随分と大人っぽかったな。
「ん?」
「んふふっ。」
リビングのソファでお風呂上がりの淳弥を見て、私はふふっとニヤニヤするのであった。
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作者名:のん | 作成日時:2021年10月17日 10時