34 本音と本音 ページ38
家に帰り、玄関で靴を脱いだ瞬間バタンと淳弥はその場に倒れた。
「淳弥!?」
弟はただ酔っていただけ。そりゃああんなにたくさん飲めば頬が赤くなって酔う。
家までは私が運んだ。
あの後、もうこれはまずいと思って会計を済ませて店を出たのだ。運ぶのはすんなりと。だって軽いんだもの。
「ごめん、大丈夫!?」
思いきり顔から冷たい床へ倒れた淳弥に声をかける。肩を揺さぶるが、反応なし。
「早く…ベッドに_______うわっ!?」
まずいまずい、と焦りながら早くベッドへ運ぼうとする。
ゆっくりと腕を掴んで自分の肩へ回そうとしたその時だ。絶対にさっきまでは意識はないものだと思っていたのに、急に私へ抱きついてきた。
もちろんそのまま倒れてしまい、私に馬乗りをしているかのよう。
「すき。」
「…え?」
いきなり何だろう。聞き間違いか?と疑いたくなる。でもはっきりと聞こえた。
「すき。」
ぎゅっと首に回している腕に力が入っていくのがわかって少し痛い。それに胸元くらいに顔を埋めているので起きているのか、それとも寝言なのかわからない。
「ねえちゃん、すき。」
「えーっと、今日の淳弥さんは素直だなぁ。」
同じ言葉を聞き、あはは、と静かな玄関で苦笑い。どうすればいいのだろう。
「ずっと、むかしから…ねえちゃんのこと、すき。」
ぷつん、と何かが切れたみたいに淡々と言葉を区切りながら話す弟。
「そっか!お姉ちゃん嬉しいなぁ。」
「おれの、ねえちゃんの、ままで…いて。」
「何言っているの。当たり前でしょ。」
「いやだ。いまは、おれのねえちゃんじゃ…ない。」
「!」
つい数十分前の言葉を思い出す。
____AはAのままでいてほしかったなぁ。
「ねえ、淳弥の思う私ってどんな感じ?」
今は本音を吐き出しているであろう淳弥に聞いてみた。
ぽんぽん、と私は優しく弟の背中を撫でる。
「うるさくて、りょうりできなくて、でもえがおがたえなくて、かわいい。」
前半はそのまますぎる解答。後半は、あまり本人から言われたことがなかったのでびっくりした。
これがもしテストだったら、満点を与えていただろう。
「ごめんね、でも変わらなきゃ。」
これは私の本音である。
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作者名:のん | 作成日時:2021年10月17日 10時