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32 外食 ページ36

いつもは家で2人で食べることが日常化しているが、私は弟に“外食しよう”と誘った。

淳弥は何も聞くことなく、“いいよ”と即答した。


___それが今日の朝の出来事である。






別に高級なレストランやおしゃれなお店とかではない。私達は家の近くの居酒屋に行った。

夜なので会社帰り等々で来ているお客がほとんど。




店員さんに2人分のテーブルに案内されてお互いに座る。


私は適当にいくつか注文した。
淳弥は意外にもお酒を頼んだ。最近は飲んでいる姿を見かけなかったけれど。








注文したものが来る前に早速私は話をすることにした。

変わらなければならないとそう思った。






「私、1人暮らし始める。」

「…。」

「気付いていたでしょ。」

「うん。」






私がそう言って一瞬驚いた表情をした弟だが、勘のいい淳弥ならわかっていたはず。でも少し様子がおかしかった。






「止めない?」

「だってその前は別々に住んでいたんだし、前に戻るだけだよ。」

「そうだね。」






試しに聞いてみたが、予想していた反応ではなく少しショック。






「てっきりデレが出ちゃって“ひとり暮らししないで!”って止めるのかと思った!」






ちょっぴり重たい空気を変えようと思ってあはは、と少し笑いながらも冗談を言った。






「そんな風に首を突っ込んだりしない、俺は。」






でもこれから住む場所を決めるのだから、まだこの生活は続いていく。









 
目の前に座っているかっこいい弟は頬を赤く染めながらどんどんお酒を飲んでいく。

食べ物ではなく、お酒を注文している姿はやはりどこかおかしい。






「…ねえ。」

「何?姉ちゃん。」

「お酒、飲みすぎじゃない?」

「久しぶりだからたくさん飲んでるだけ。」

「で、でも流石にこれは…。」






やっぱり少し飲みすぎだと思う。


頬が赤くなる以外にも、目が少しずつ閉じていきそうになって眠そうだ。

もう飲むのをやめて早く帰って休ませてあげよう。


とりあえず今日はさっきのことを話せたので良かった。






「おれは、」

「?」






その時。淳弥は頬杖をつきながら、そして空っぽのコップをぼーっと見つめながら言葉を発する。






「Aのきめたことにはなにもいわない。でも…。」






しかし弟の言葉は予想外のものだった。







「AはAのままでいてほしかったなぁ。」

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作者名:のん | 作成日時:2021年10月17日 10時

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