29 料理の練習 ページ33
休日なので、あまり早い時間に起きない俺は昼前まで眠っていた。
相変わらず夜遅くまで起きていたしな、と思い欠伸をしながらリビングへ向かうと、びっくりした。
「え?」
姉はなんとエプロンをして台所に立っていた。
長い髪を後ろでひとつ結び。可愛らしいシュシュで。
「おはよう、淳弥!」
「おはよう。…何してるの。」
「料理の練習だよ!」
見ればわかるでしょ?と笑顔で喋る。
それと何か匂いがするが気のせいだろうか。
「なんで?俺のじゃ不満?」
「違う違う!このまま弟に頼りきってるのは駄目だと思って!」
この前のこともある。不安になった俺は姉のところへ足を動かす。
すると1枚の皿に乗せてある焦げた玉子焼きらしきものが視界に入る。いやまさか。
何か匂いがするのって、もしかして…。
「何これ。」
「玉子焼き!」
当たりたくないことが当たってしまった。
黒い物の正体は、玉子焼き。
「丸焦げじゃん。」
「見た目はあれだけど、味は大丈夫だよ!」
と、いつの間にか準備していた箸を持って姉はひと口ぱくっと口に運んだ。
「んっ…!?ごほっ。」
「言わんこっちゃない。」
見た目もあれだが、味もやばかったらしい。
俺はすぐコップに水を注ぎ、咳き込む姉に、すぐ飲むように渡した。
「ぷはー。美味しかった!」
「嘘つけ!」
…涙目じゃないか。
とりあえずその後、姉は玉子焼きを習得した。
「やっぱり私、料理は無理だね!」
「笑顔で言うことじゃない。」
ちなみに黒焦げ玉子焼き(だったもの)の残りはというと、それに関してのちょっと争いが起きた。
「淳弥、せっかくお姉ちゃんが作った料理を食べないの!?」
「誰が黒焦げの、さっき顔色悪くさせたその物体を食べるか!」
とにかく姉は俺にあれを食べさせようとお皿と箸を押し付けてくる。
最初は笑顔でそうしていたが、どんどんしょぼんとした顔になっていく。
そんな顔をさせるつもりはなかったのに。
「…食べる。」
「!」
そう言った瞬間、ぱあっとみるみる笑顔になっていく姉。単純であるだろうが、俺があれを食べれば姉は喜んでくれる。
「いただきます。」
ぱくっと黒い物をひと口食べる。もぐもぐと噛んで、噛んで…?
「…水。」
___やっぱり駄目だった。
Aはというと、顔色を悪くした俺を見て“ごめん淳弥あああ”と叫んでいた。
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作者名:のん | 作成日時:2021年10月17日 10時