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25 髪 ページ29

お風呂から上がった姉は可愛らしいもこもこのパジャマを着てリビングへ戻ってきた。

そろそろその子供っぽいのはやめてほしいなと思いつつも、可愛いから指摘はしない。






「姉ちゃんの髪、伸びてきたよね。」

「そうだねー。」






と会話をしながら、彼女は椅子に座る。

そして当たり前のように俺はドライヤーをコンセントにさして髪を乾かす準備をする。



これは昔からの癖で今に始まったことではない。
俺はなぜか姉の髪を乾かす係をやっている。理由は特にない。






「もっと伸ばすの?」

「うーん。どうしようかな。」






さらっとした柔らかい髪を優しく触る。女性らしさが増したなと実感した。






「髪乾かすよ。」

「ありがとう。」






もちろん姉の後ろに立って乾かすけれど、今はどんな表情をしているのだろう。鏡持ってくればよかったな。









 
それから終わった後は相変わらずテレビの前にあるソファに座る。






「綺麗だね。」






また俺は姉の髪を撫でるように触った。






「これでもちゃんとお手入れとかしてるんですよー。」

「シャンプー、俺の使ってるよね勝手に。」

「…あ。いや、買うのが面倒だなって…。」

「別にいいけど。」






ふふん、と最初はドヤ顔をしていたが、俺の言ったことが本当ですぐ暗い顔に変化した。






「ねえ、やっぱりおかしいよね。」

「ん?」

「姉弟ってこんなに、お互いに執着してるのかな。」






俺はずっと前から言いたかったことを口にした。今、このタイミングで言うべきではなかったと思う。無理矢理話題を変えたような。






「私は弟のこと可愛くて仕方がないからこの先ずーっとこんな感じだよ。淳弥は?」

「…俺はこのままでも……別に。」

「うん!じゃあこのまま!」






一瞬、姉は驚いていた。しかしすぐ切り替わっていつもの明るい表情へと戻った。

これは、本心だろう。嘘をつくような人ではない。






姉はこんなに純粋なのに、俺は少し歪んだ考えを持っている。






「…姉ちゃんはどこにも行ってほしくないな。」






昔からずっとずっと好きでその好きが一体どういう意味での好きなのかはわからない。






「髪、乾かしてくれてありがとう!おやすみ!」






姉は手を振って自室へ入って行った。






「…おやすみ。」






まだ微かにシャンプーの匂いが残っていた。

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作者名:のん | 作成日時:2021年10月17日 10時

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