19 手料理 ページ22
暑い夏から、少しずつ冬へ。
外へ出るとヒヤッとした風が吹き、肌寒い。
「疲れた…。」
そんな中、私___榎木Aは家の台所に立っていた。エプロンをつけて。
実はと言うと、今日は淳弥の誕生日。
大好きな家族のため、私は頑張って料理をしている。
仕事は午前中だったので、時間には余裕がある。
「私くらいでもカレーは作れるはずだよ…。」
とりあえず、だ。
料理が大嫌い、かつ苦手な私でも作れそうなカレーを作ってみることにして、包丁を持ち、野菜を切っている。
「形…変だなぁ。」
あはは、と苦笑い。
私が切った野菜さん達は変な形をしている。
いやいや。食べれば一緒。お腹に入れば一緒である。
じゃがいもをコツ、コツと音を立てながら切っていると、
「いっ…！」
手にいきなり激痛が走った。
恐る恐る左手を見ると、赤い液体が指から垂れてきている。
血だ。
＊
今日は自分の誕生日で、仕事場では「おめでとう」とたくさんの人に祝福された。
しかし、朝から____姉からは何もなかった。
いつもは0時になって日付が変わった瞬間に祝ってくれるのに。どこか寂しい気持ちになった。
「ただいまー。」
ほんの少し落ち込みながらも、仕事が終わって無事帰宅。
姉は午前中だけ仕事だったので、家にはいるはず…と思ったけれど、返事がない。
リビングへ行くと、台所に姉の姿があった。
ずっと水道の水を出し、手を洗っている様子だった。
「どうしたの。」
「あ、おかえり。ちょっと切っちゃって。」
水と一緒に切った部分から出ている血も流れていた。
血はまだ止まらない感じだった。
「…絆創膏持ってくる。」
「ありがとう。」
なぜ姉は料理をしていたのだろう。
______怪我までして。
いつも料理は俺が全部している。姉が料理出来ないから、という理由が主だけれど、無茶をさせたくないからだ。
疑問を抱きながらも、俺は救急箱から絆創膏を1枚手に取った。
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作者名：のん
| 作成日時：2021年10月17日 10時
