アンタの作戦には乗らないから。【音駒】

３６の作戦 ページ36

「あ、ご、ごめん…。」









　
私はいつの間にか眠ってしまっていたようだ。兄の腕の中で。辺りを見回すと、私達だけだった。









　
「ひ、日向君は…！？」


「帰った。」


「うっ…。」









　
せっかくの貴重な時間で、お喋りしようかと思っていたけど…。私がこんな風じゃ駄目だなぁ。









　
「ごめん、兄ちゃん。じゃあ帰るね。」


「…。」


「？」









　
私はその場に立ち、体を伸ばしながら言った。すると、兄は何か考え事をしていた。手を口に当てて。









　
「なんか、やばい予感がする。」


「え？」


「ほら。マネちゃん達一緒にいるだろうけどさ、Aの私物とか…さ。」


「…。」









　
そこまで考えていなかった。あの空間から逃げ出してストレス発散しようというところまでしか考えていなかった。


まさか、私のものをいじるなんてそんな性格の悪いことは……。









　
「何かやってそう。」


「だろ。」









　
あのあかりちゃんだ。何かをするに決まっている。


しかし、“もの”だからそのまま取っておけば十分な証拠になるからいいけど。もし、もし“大事なもの”が壊されたりしたらと思うと、絶望しかない。









　
「私すぐ戻るね！」


「おう。」


「…ありがとう。兄ちゃん。」


「！」









　
私は兄にお礼を言って、全力ダッシュ。私の走っている足音だけが響いた。

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