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2月14日当日。
幹部であるひとらんらんは、いつも通り他の兵士に比べ少し早い時間帯に朝ごはんを食べに来た。珍しく彼の隣には早起きをしたオスマンの姿もある。そんな彼らを見つけた同期がAの腕を小突く。
「ほらひとらんさん来たぞ。」
「こんな朝イチで渡せるわけないでしょ」
「でも今行かないといつ行くんだ？臨時で内ゲバがあったら絶対会えないぞ」
同期の言葉の通りである。
Aは決心して頷くと先輩に少し抜けます、と伝えて冷蔵庫から冷やしておいた小さな箱を取り出す。同期だけでなく先輩も事情は分かっているのでみんな顔がニヤニヤと笑っていた。
あまりの恥ずかしさに顔に熱が篭る。そんなAを見た厨房のメンバーは笑いに包まれていた。みんなに冷やかされながらも厨房を出たAが、ふと彼を見やるといつもと違うことに気付く。
朝から何色にも染まるような真っ白な軍服を着た彼は、食堂の真ん中にすらりと立っている。そして…彼の手には真っ赤な薔薇が一本握られていたからだ。
そんな彼の隣ではオスマンがにこにこといつもの何を考えているか分からない笑みを浮かべていた。
どういうことなのだろう、と足が止まる。
何かを探しているかのように首をキョロキョロとさせるひとらんらん。Aは咄嗟に隠れようとするがオスマンとばっちりと目合い、挙句には手招きされてしまう。
幹部は、すなわち、軍のトップ。
一調理師のAがそれを断れるはすがなく背中に袋を隠しながら彼の元に向かった。まるで死刑執行される囚人かのように気が重い。
「やあ、Aちゃん。今日も朝早いなぁ」
「おはようございます。オスマンさん。ひとらんさん。お二人も早いですね」
「いつもやったらもっとゆっくり寝るんやけど今日は早起きすると良いもの見れそうやったからなぁ」
「そ、そうなんですか…？」
「なっ、ひとらん？」
「ちょっと…マンちゃん…」
オスマンの悪戯っ子のような笑みを見たひとらんが静かに溜息をつく。そんな憂いを帯びた姿もかっこいいと思うAは重症である。
「A。今、時間はあるかな？」
「えっ、わ、わたしですか？」
「うん。ここじゃ人が多いし、少し二人で話をしたくて」
「ふたりではなし…？！」
Aは本人からもらったまさかのチャンスに舞い上がる気持ちを抑えきれずに、もちろんです！と首をこくこくと縦に振った。
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