ChocolatePalette 【d!】 (ページ2)

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「この服は一体何かしら？鬱。」

仕事が終わるや否や、お高そうなブランドの紙袋を手渡され、着るように促された。
それは彼の瞳と同じ色をしたドレスと、まるで私に誂えられたかのようにピタリとハマるパンプス。

「あー、まぁ、着いたらわかるわ。」
「そう。ならいいんだけどね…」

彼にエスコートされるままに、助手席に乗り込む。
窓から眺める景色は、身に纏うものが違うだけで何も変わりはなかった。

どの位車を走らせていたのだろうか。
連日の仕事の疲れでうつらうつらとしていたら、優しい声音で起こされた。

「着いたで。」
「ここってまさか………」

目の前に聳え立つのはホテルで、エレベーターの目的階には予約困難なレストランがある。
何年待ちだとかなんとか聞いていたのだが、まさか、ねぇ……。
席に着き、届いたワインを飲みながら料理を待つ。

「よく予約取れたわね。」
「実はな、俺らが付き合い始めた日に予約したんやで。」
「はぁ？バカなの？別れてたらどうするつもりだったのよ」
「考えてへんかったなぁ、ま、友達連れてきとったんちゃうかな」

あはは、と笑う彼に一言二言投げかける。
が、返答がない。

「どうしたの？」
「あー、いやその、あんな、伝えたい事があってん」
「うん。何？」
「……俺と、結婚してくれんかなって。」

彼は、懐から小さな箱を取り出して、こちらに向き直る。
箱を開くとそこには銀色のリングが光っていて。

「………？本当に、私でいいの？」
「Aやから、言っとるんよ。」
「後悔しない？」
「勿論。何なら、一生かけて幸せにする自信あるで。」
「不束者ですが、よろしくお願いします。」

あの時の彼の笑顔は、今でも鮮明に記憶に残っている。