【d!】さざ波が立つ【合作企画】 (ページ7)

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地上からの落しモノ【zm】ページ7

海には、毎日たくさんのモノが地上から落ちてくる。

細くて小さな白い棒。
液体の入った透明の筒。
触ると血の出る銀色の刃物。
きらきら光る綺麗な石。

どれも使い道は全くもって分からないけれど、全部海の中には存在しないモノばかり。

それもそうよね。
だって海の中ってびっくりするぐらいなんにも無いんだもの。

ねぇ知ってた？地上にはあって海には無いものって、星の数ほどあるんだよ。

ホノオってなぁに？
オチャってなぁに？
デンキってなぁに？
オカネってなぁに？

私たちはなんにも知らない。

別に知らなくたって生きてはいける。

…だけど、知った方がきっともっと面白い。

私は、いつも海の中に何かが落ちてくることを心待ちにしていた。

あのね。地上のモノって、不思議と魅力的に思えるモノが多いの。海の中では見られないような、神秘的なモノが沢山あるのよ。

だからそれを箱いっぱいにコレクションして、綺麗に磨いて、1人でうっとり眺めるの。

ね、素敵でしょ？
私、その時間が一番大好きなのよ。

…だから、これにはとっても困ってしまう。

『まさかニンゲンが落ちてくるなんて、普通思わないじゃない…』

私の目の前に飛び込む「地上からの落しモノ」。

私たちとは違う、2つの尾びれ。
口から溢れる大量の気泡。
苦しそうに水中でもがく姿。

―――本物の、ニンゲンだ。

…あぁ、どうしよう。

苦しんでいるのに助けないのはさすがに非情。放っておいたらきっと彼は死んでしまう。

だけど、私たちは決してニンゲンと関わってはならない。
それは海に住む仲間と一緒にみんなで決めた約束ごと。

彼を助けてしまえば掟を破ることになる。
だけど掟を守れば助かる命も助からない。

…考えることわずか数秒。
私は震える腕でニンゲンの体を抱きすくめ、勢いよく水上へと向かっていった。

*°

『ここならきっと大丈夫よね』

人気のない小さな島。
その海岸に、私は拾ったニンゲンを横たえた。
苦しげに息を吐く彼の背を撫で、額に張り付いたブラウンの髪の毛を整えてやる。
青白がった頬に赤みが戻るまで、そばでじっと座り続けた。

「………ん…？」

…どれほど隣にいたのだろうか。
気がつけば日が傾き始め、空が赤くなっている。
流石にそろそろ起きて欲しいなぁなんて思っていれば、隣に寝転ぶ彼が小さく呻き声をあげた。