【d!】さざ波が立つ【合作企画】 (ページ20)

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騒がしい幹部達を見ながら私は、「いくよー」と気の抜けた声を出すと素麺を流す。ぎゃあぎゃあと、たかが素麺のため殴り合いに発展しているいつもの面子を見てついに噴き出してしまった。

「随分と楽しそうっすね」
「あそこ見たら誰でも笑っちゃうでしょ」
「いや、笑うどころか殺意しか湧きませんけど」
「それってコネシマがいるから？コネシマもいい奴なんだし仲良くしたらいいじゃん」

　くくくっと込み上げてくる笑い声を抑えきれず、そのままショッピくんの肩に触れる。彼は肩に触れた手をしっしっと払い除けるとそっぽを向く。どうやら拗ねたらしい。

「もー、何が気に食わなかったの？」
「気に食わないとかありませんけど。」

　随分と冷たい彼に私も一つ溜息を吐いていれば、噂のコネシマが「Aー！」と大声で私を呼ぶ。大声の割には彼はすぐ側まで来ていて、私の手首を掴んだ。

「どうしたの？」
「次の素麺頼むわ！」
「おっけー。ってそんなに急かさないでも大丈夫だって」
「シャオロンとロボロがゾムを止めてる今がチャンスなんや！はよしてくれ！」
「あ、なるほど。了解」

　あの暴動にはそういうわけがあったのか、とまた思い返して笑っていれば反対の手を誰かに掴まれる。

「ん？」
「コネシマさん、その手離してもらえますか」
「え、なんでや！？お前も(素麺を)狙っとるんか！？」
「狙っとるって言うか、もう俺のなんで」

　そう言った彼は後ろから私を抱きしめる。

「は、」

　あまりのことにがしゃんっと網ごと素麺を落としてしまった。大声であぁ！と叫ぶコネシマの声と、先ほどまで捕らえられたゾムが「なんや二人は付き合っとったんか！」と冷やかしの声を上げて、みるみる体が熱を帯びる。

「あの、ショッピくん…？」
「なんすか」
「みんなに言って良かったの…？」

　あの人達絶対めんどくさいよ、と続けようとした言葉は出ない。だって彼の顔が珍しく真っ赤だったから。

「………はぁ、おれ、幼稚いっすね」

　私から体を離して顔を隠すように手で覆う。いつもの余裕はどこへやら、彼は思春期の男子のような反応をするものだからだんだんと面白くなってしまった。
　
「そういうところも好きだけど」

　彼にだけ聞こえるように耳打ちすれば、彼ははぁ、と深い溜息を吐く。

「今度二人っきりになったら覚えといてくださいね」

　

　二度目の夏は、夏の忙しさを表すように賑やかなもの。笑い声と赤く染まった彼の頬がやけに印象に残った。