【d!】さざ波が立つ【合作企画】 (ページ12)

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大嫌いだ【kn】ページ12

ガタンゴトン、電車の振動に揺られながら窓の外を横目で見る。
まだ目的の場所まで着いていないそこには、田舎と都会の真ん中、とでも言うのか、なんとも表しがたい景色が広がっていた。

目の前に視線を戻すと、景色なんて気にしちゃいないとでも言うように、手元のスマホをずっと見ている彼氏が居た。

付き合いはじめて2年。結婚にははやいけど、お互い色々慣れてくる時期。
1年前まではどっちかの家に行ったらイチャイチャして、どっか外に遊びに行ったらハチャメチャに楽しむ…、そんな風にして、笑いあっていた。

なのにココ3ヶ月…いや、4ヶ月か？
そのあたりから段々と変わっていった。
まず第1に、笑顔が減った。
第2に、口数も減った。
お互い仕事が忙しいのもあるが、前までは3日に1度は動いていたLINEが1週間単位になるとは思ってもいなかった。

そして、なにより二人の時間の際、毎回と言ってもいいほど目が合わない。
スマホや雑誌ばっかり見ている彼は、心ここに在らずといったところだろうか。私のことなどいてもいなくてもいい存在のように扱っている彼を見るのはかなり心が痛むもので。
話しかけたって、なにをしたって無視無視無視。

昔はピンクのハートだったものが、どす黒く染まってしまったようだ。

ああもう、大嫌いだ大嫌いだ！

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その後、色々と考えているうちに寝てしまったようで、電車が止まる時の振動で私は「ハッ」と目を覚ました。

慌てて荷物をまとめて立ち上がり、外へ出るために改札をくぐる。
その間も当たり前だが、彼氏とは無言のままだった。

本当やになっちゃう。今日だって久しぶり遠出をしようと誘ってきたのは向こうなのに、なにもしてこないし。

もう、潮時ってやつかな。なんて暗い考えを巡らせていた私だが、駅から出た瞬間見えた光景に、思わず目を奪われた。

海だ。
目の前に、海が広がっている。

彼は静かに歩き出した。
つられて私も歩き出す、が、目は太陽の光を受けて煌めく波に釘付けだった。

そういえば、とふと思い出す。

付き合った当初、2人で海に行く予定だった。しかし都合が合わずお金もあまりなく…仕方なく近所の川を散歩したのを覚えている。

近所の川なんてロマンもなにもないけど、ただ他愛もない話をして過ごすあの時間が楽しくて楽しくて仕方がなかった。

また、戻れたらいいのに。

「なぁ」
思い出を劈くように、愛しい声が入ってきた。