見えるから見ないだけ Ⅲ【呪術廻戦】 (ページ45)

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「あ、悪ィ電話。……Aも来る？」

『いや、私はいい』

うなずいて、スマホを確認し始める
伊地知さんが相手だろう

そんなことは問題じゃない
大事なのは、【これから起こる】こと

「虎杖君は呪術師なんだよね？」

「おう」

「人を……殺したことある？」

悠仁の顔を確認してなお、鞍久は静観している
興味はある

「ない……」

「でもいつか、悪い呪術師と戦ったりするよね。その時はどうするの？」

「……それでも、殺したくはないな」

「なんで？悪い奴だよ？」

きっと吉野くんもこれが聞きたかったのだろう
悪い奴をどうして力あるものが殺してはいけないのか
呪術師なんていうのは特に、その辺が分からなくなりやすい

「なんつーか、一度人を殺したら「殺す」って選択肢が俺の生活に入り込むと思うんだ。命の価値が曖昧になって、大切な人の価値まで分からなくなるのが俺は怖い」

やっぱり悠仁はかっこいい
鞍久は心底そう思っているし、顔を見る限り吉野くんも理解したんだろう

彼が映画館の呪霊を庇う理由も知っている、そしてそいつとナナミンが戦っていることも

ただ、これで、悠仁の発言が彼を変えるのなら
だとすればやっぱり、

【この未来は変える必要がある】

鞍久がそっとサングラスに触れた