見えるから見ないだけ Ⅲ【呪術廻戦】 (ページ19)

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『ごめんね、独り言だ』

「……今から関係ねぇこと言う。…俺は、Aがいてくれて嬉しい。Aに助けられた。あんま詳しいことはわかんねぇけど、【変えられない】と【変わらない】は違うだろ」

ハッとした
鞍久がうつむきそうになって、無理矢理顔を上げる

うつむいてはいけない
前を向くんだ

口元に力をこめて、目が熱いのを瞬きで堪える
自分の口が震えているのが分かった
目元もじんわりと濡れてくる
それでも目を抑えたら負けな気がして、耐える

悠仁はいつもそうだ
そのとき欲しい言葉を素で言ってしまう
優しい【人間】だ

ずっと息苦しかったなんて言ったら笑われてしまうだろうか
目に浮かぶ黒髪の男性を首を振って振り払う

【悠仁だから】だ
他の人ではダメだったのだ、きっと

『ありがとう』

「？何が？」

きょとんとした彼が私を見て
それから驚いたように飛び上がった

目赤い、なんて

君のせいだと言ったらどんな顔をするだろう

『悠仁、』

「えっ、なに？」

あたふたと冷たい布を持ってきた彼は私の呼び掛けに顔を上げた
慌てたのか濡らした布を取り落とし、やっちまったと顔がひきつっている

『この映画思った以上につまらないから、変えようか』

「おう！」

鞍久の顔を見て、映画を見て、それからカラリと笑った