12 ページ12
「もう帰るの？」
子犬のような目が私を見つめる。
躊躇しそうになったけど、こんな子犬に踊らされるのは御免だ。
『明日も仕事だからね、』
「会社、○○駅の向かいでしょ？あそこなら俺の家から通えば？」
何言ってんだこいつ。
それからなんで会社の位置知ってんだこいつ。
ってのは顔に出ていたらしい。
「これも自分で言ってたよ。
Aちゃんの家は知らないけど最寄り駅は分かるし」
もう本当に絶対一人で飲んだりしない。
こんなに個人情報が洩れるなんて思ってもいなかった。
『私は、帰るから』
こんなことでいちいち冷静さを欠いている場合じゃない。
とりあえず、帰るしかない。
「そっかぁ、残念。」
寂しそうにつぶやくのは演技なのか本当なのか。
それを見抜くような力は持ち合わせていない。
『じゃあお会計、』
「今回は俺のおごり。来て欲しいって言ったのは俺だから。」
財布を取り出すとその手を押し込められた。
割と力強いな、ってのはどうでもいい。
『いや、それは駄目。』
お財布から千円札を数枚抜き取ってカウンターに置く。
多めに置きすぎたかもと思ったけどここで数枚財布に戻したらかっこ悪いのでもうどうしようもない。
『おつりはいいから、ご馳走様』
パンプスをコツコツと鳴らしながら店を出る。
私のほうが大人なんだから。
あんまりからかってたら痛い目に合うわよって背中で言ってやる。
そして、店を出たら深呼吸。
寂しい者同士。それもまぁ悪くはないか。ほんの少しそんな風に思えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 178人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるつぁんこ。 - Twitterから書き終わりましたのツイートを見て飛んできました！！もう最高すぎて……もうありがとうございます！！！！！ (2022年5月8日 0時) (
レス) @page43 id: 46806adbbf (このIDを非表示/違反報告)
ZAVdy3wfTqOL6Rh(プロフ) - もう本当に最高でした!!増田くんの可愛さに終始やられてました。 (2022年5月8日 0時) (レス) @page43 id: 62e21974b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ばりぃ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/kmk_valley
作成日時：2021年8月28日 11時
