卑しき狗は笑わない 参

佰拾壱 体目（111体目） ページ38

扉が開く音に私は目を覚ました。
そこから微笑みながら紅葉さんが入ってくる



「A」




『話は聞いていた。紅葉さんの部屋に泊まればいいんだろう？』



あれから寝た後、紅葉さんが出て行った時に
本当は目が覚めてしまっていた。
それからぼーっとしていて、最後の方だけ聞こえてしまっていたのだ。




「荷物は簡単な武器とかだけで良いか？」




『あぁ、この鞄に入っている物だけでいい』




そして部屋の扉に手をかける。

紅葉さんの家は楽しみだな。


ーーー
ーー
ー



「着いたぞ」



紅葉さんの部屋は一言で言うと、【和】であった。

和室に食器も和風な物が多い。



「此処を部屋として使ってもらっていいかのぉ？」



紅葉さんに案内されて入った部屋は
先ほどと同様に和室
どこかの旅館にありそうな部屋だ。




『わざわざすまないな。有難う』



礼をすると紅葉さんは私の頬を手で挟んだ。



『な、なんへふか。ほうようひゃん』



「まず、年上には敬語をと言わなかったかぇ。それと後で着てもらいたいものがあるのじゃ」



準備が終わったらリビングに戻れ
と言うと部屋は私1人となった。




『…………なんか』




落ち着かないな。
いつもは中原と過ごしていたせいか、
この部屋にも、1人の空間にも慣れない。




『一週間、か』



一週間で私は元の様な精神に戻れるのだろうか。
怖がらずに、中原たちと話せるだろうか。




『まずはやってみなくてはな』



首を振って気持ちを切り替える。
今は、この生活で精神を元に戻すことだけを考えよう。




私は鞄を置くと、部屋を出た。




この後はなんとなく予想がついていた。


「ファッションショーの始まりじゃ」

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