39 ページ47
｢……え、ええと｣
宣言通り、ブチャラティさんを兄さんの部屋に連れて来たのは良いものの。
｢すう……すう……｣
｢……机に突っ伏して爆睡してるな｣
｢プリンとAがアラモード……ふふっ……｣
｢寝言まで言ってるぜ。プリンと君がアラモードするとどうなるんだ？｣
｢さあ……？｣
力尽きたように突っ伏す兄さん。机の端には書類の山。お仕事でお疲れかしら？
｢兄さん、起きてくださ──｣
｢いや、このままでいい｣
兄さんに伸ばした手をブチャラティさんが制する。
｢気持ち良く寝てるところを起こすのは……なあジョルノ？｣
代わりに、ブチャラティさんの手が兄さんの髪を撫でた。双子のはずなのに、私とはまるで違う金色の髪。
｢色々大変そうだな。後のことを全て任せてしまってすまない。まあ、お前のことだからきっと上手くやれると信じている｣
｢ミスタは元気か？言わなくても分かってるだろうが、アイツは頼りになる男だ、仲良くやれよ｣
｢フーゴは結構繊細だから、あんまり辛い思いをさせないでやってくれ。……オレが一番悲しませてしまったのかもしれないが｣
｢トリッシュは今、幸せだろうか。思えば彼女の護衛から全てが始まった。何もかも昨日のことのように思い出せるのは、オレの時が止まっているからか？｣
ブチャラティさんが静かに語り続けるのを、私は黙って聞いていた。
｢ありがとうジョルノ。お前がオレを生き返らせたんだ｣
開いていた窓から爽やかな風が吹いた。
.
｢──ブチャラティ？｣
眠っていた兄さんが顔を上げる。きょろきょろと辺りを見回すけれど、部屋には私と兄さんの二人っきりだった。……最初からずっとそうだったように。
｢ああ、Aか。何だか懐かしい夢を見ていたような……あれ｣
兄さんが自分の頬に触れる。瞳から止まることなく溢れだす透明な水滴に、不思議そうに首を傾げた。
｢すみませんA、用件があるなら後で──｣
私は兄さんをぎゅっと抱き締めた。兄さんの息を呑む音が聞こえる。
──ブチャラティさん達との出会いで分かったことがある。
私は兄さんのことを何も知らないのだ。私と出会う前の貴方も、今の貴方の涙の理由も。何も知らないまま、ただ貴方の優しさだけを享受している。それが、さみしい。
｢……A？｣
｢兄さん。私、ずっと兄さんの側に居ます｣
もっと貴方のことを知りたいから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 225人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あさはか金魚(プロフ) - 面白い！こんな面白い作品を作っていただきありがとうございます！！ (2020年8月2日 10時) (
レス) id: bae01be7f3 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - tamaさん» コメントありがとうございます！最初にコメントくれた方ですよね？ずっと読んでくれていたこと、感謝します。これからも頑張ります！ (2019年11月14日 0時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - お久しぶりです！31話からもうわくわくでした！頑張って！ (2019年11月12日 20時) (レス) id: 85d88e1cc2 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 美琴さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてなによりです！ハロウィン後半のテーマは『あの人達と一日限りの邂逅』です。もう11月ですがまだハロウィン回は続くので楽しんでいただけると嬉しいです！ (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 幽銀さん» コメントありがとうございます！作者も読んでくださる読者の皆さんがいっぱいしゅき…… (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：伯 | 作成日時：2019年9月3日 4時
