【浦島坂田船】防音シェアハウスにて大暴走中

65曲目　じゃんけん大会 ページ15

というわけで土曜日に坂田さんとセンラさんと、三人で映画館に来ました。

うらたさんと志麻さんがいない理由は、あの朝食の前の出来事にあった。



『…あれ、これ、今流行ってる恋愛映画のチケットじゃん』


『あ、うらたん。おはようございます。
ああそれ俺のやから返し『誰と行くの？』それはぁ…『三枚あるけど』か、会社の人と…』


『ふーん。じゃあ、Aとは行かねぇな？』


『…Aちゃんと行くつもりでした…っ！』


『じゃあチケットが一枚余るな？』


『ま、まさかうらたんも来るつもり『『ちょっと待ったぁぁぁぁぁあ！』』そ、その声はっ！』


『坂田！まーしぃ！』


『話は聞かせてもらった！抜けがけはズルいで！』


『ここは公平にじゃんけんで決めようや！』


『望むとこや…なぁうらたん？』


『ああ、手加減はしないぜ…？行くぞ！』



『『『『じゃーんけーん！』』』』





そしてチケットを勝ち取ったのが坂田さんとセンラさんなのだ。

というか何故チケットを貰ってきたセンラさんがじゃんけんに参加したんだろうか。
まあ勝っているわけだから結果オーライだが。




「恋愛映画やって！なんかドキドキするなー」


と、左隣りで終始嬉しそうにニヤけている坂田さん。この人の笑顔には、見ているこちらも嬉しくなる不思議な力がある。

そうですね、と微笑むと照明が消えはじめ、いよいよ映画が始まる。



映画が始まりすぐのこと。

仲睦まじい男女が早くもトラックに轢かれかけるというハプニングが起きる。

私はそのシーンで思わず顔を俯かせる。

すると、右手が優しく包まれた。


驚いて右を見ると、センラさんは映画ではなくこちらを見ていた。

恐らく口パクで、大丈夫？と声をかけてくれている。

私も同じく口パクで、伝わるようにゆっくりと大丈夫です、と返事をした。



それでも離れることのない手。

その手の温もりは確かにベタではあるが、安心感は抜群であった。


坂田さんの方もちらりと見ると、彼は映画に完全に魅入っているようで、目を輝かせ真剣に見ている。

子供のようで可愛らしいその姿に、自然と小さな笑みが溢れると共に、私も真剣に観ようと思い姿勢を正し正面を観た。



物語は進み終盤。

事故により記憶を失くしていた彼女が記憶を取り戻したシーン。


抱き合った男女。
画面はその顔をアップにし、徐々に近づいて行くそれが全面に現れる。



ついに重なる、その時だった。









私の目の前から光が消えた。

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