秘めた言葉 ページ36
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「…知恵熱、かな」
喉や鼻の不調はなく、ただただ倦怠感と熱っぽい感覚が全身を覆っているよう。流石にここ数日色々あり過ぎたせいで、知らず知らず疲労が溜まっていたのかもしれない。今日はテレワークの予定だったけれど、正直パソコンと睨めっこすることすら辛く…申し訳なさいっぱいのまま上司に休暇の旨を申し出ると、有難いことに快く引き受けてくれた。むしろもっと休めと電話越しに半ば叱責される始末。上司の心遣いに感謝しつつ画面を暗くしたスマホを放り、布団に身体を横たわらせる。常備薬はあるから、飲む前に何かお腹に入れなきゃ…そんなことをぼんやり考えていると不意にインターフォンの音が部屋に鳴り響いた。呆けた頭を振るい、重い身体を引きずり応答ボタンを押す。
「？！マンちゃん、なんで…」
「"説明は後でするから。先に入れてや"」
「う、うん…」
促されるまま解除ボタンを押し、オートロックのドアが開く。今日は平日でマンちゃんも仕事のはずだけど…何故突然家にやってきたのか。心当たりがなく余計に思考をぐるぐる回しながら玄関へ足を運ぶ。内鍵を回した直後、ちょうどマンちゃんが到着した。色々と聞きたいことが山積みで、早速問いかけようとしたその時。玄関の扉が閉まったと同時に視界が何かに覆われ、光が遮られる。
「…へ」
「──ん、たしかに熱あるなぁ。薬は飲んだ？」
「あ…いや……朝食もまだ、摂ってなくて」
「ならちょうどええ。お粥つくるから、ちょっと待っててな」
ごく自然な所作で額同士を合わせ私の体温を確認すると、床に置いていた袋を拾い真っ直ぐにキッチンの方へ向かっていく。その背中を呆けた頭のまま追いかける。視界いっぱいに映ったマンちゃんの顔にドキドキしているのは、熱のせいなのだろうか？
───────────
──────…
「…おいひい」
「ふふ、それは良かった」
あっという間に出来上がった食事。久しぶりにお手製の料理を口にし、少しだけ理性が戻ってきた気がした。穏やかな笑みで見守るマンちゃんを横目にどんどんお腹を満たし、きれいに空っぽになった皿が残る。
「薬も飲んだ？じゃあはい、横になって」
「えっ。そ、そんなすぐには寝れな…」
「いーから、はい。目ぇ閉じる」
「…はぁーい」
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作者名：にゃむ吉 | 作成日時：2022年5月18日 11時
