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以前ここのスタジオで仕事をした際に会った、とある女性と特徴が酷似している。こんな行動をする理由ははっきりとは分からずとも…大方の予想はついていた。さてこの後どうしたものかと、考えを巡らせるも…ひとつの気配が近づいたことをきっかけに、その拘束を解く。唐突な事を前に、先程までの殺気よりも戸惑いの色がその顔に浮かんでいた。
「え…」
「…社会的に死にたくなかったら、早くここから逃げて」
「は？なに言って…」
「いいから早く！」
「！？」
私も彼女の立場なら困惑するだろう。襲った相手に返り討ちに遭い、しかも逃げるよう𠮟りつけられたのだ。良くも悪くも彼女の面倒を見たいのは山々だけれど…今は見逃がすことが最善だと結論付ける。私の言葉に従い走り去る彼女を見送りながら、"来客"に対しての言い訳を脳内で巡らせた。
「──…何してんの、カツドウメイ」
「…あぁ。お疲れ様です、そらるさん。ちょっと派手に転んじゃって」
察知していた気配は予想通り、身近な人物のものだった。心なしかいつもより低いトーンでの質問を受け、サングラスを外しながら笑顔で答えた。地面に転がる鞄に刻まれた穴が見えぬように拾い上げ、埃を払う。幸いにもナイフは地面に落ちた拍子に外れたところを件の彼女が持ち去ったので、物的証拠は少ない。だから何とか誤魔化せる…と思いたかったのだが、この先輩にはそうもいかなかった。
「…誰の仕業？」
「何のことです？さっき転んだって話…」
「嘘つくなよ」
「……知らない人。多分、アンチ」
「チッ」
距離を詰めると同時にあっさりと鞄をひっくり返され、悲惨な状態のそれを突きつけられる。無駄な抵抗と分かりつつも、今一度誤魔化そうとしたけれど…先程にも増して鋭い視線と声音で釘を刺されてしまった。仕方なく静かに息を吐き、淡々と真実を伝える。端正な顔立ちに似合わぬ舌打ちを聞き流し、いよいよどう対処しようかと考える冷静な自分が居たことに、ひとり苦笑してしまう。
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─────────…
「──Aッ！」
「…らっだぁ」
「ごめんね、らっだぁさん。こんなことで呼び出して」
「いえ、俺は大丈夫っす…それよりA、お前怪我は？」
「無傷だよ。咄嗟に鞄で守ったから」
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作者名：にゃむ吉 | 作成日時：2022年5月18日 11時
