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息が詰まりそうな感覚で言葉を紡ぐ様子に煽られたのか、シラーさんの表情から明るさが少し抜け、寂しそうに腕をさすっている。その色に波長が合うように、眉尻が先に増して下がっていた。
「私も似たようなものです。あの日、私がAちゃんに受診を勧めたのは、本当に正しい事だったのかな…と。でも、昔Aちゃんが話していたことを思い出したら、後悔して留まるのは違うんじゃないかって思うようになりました」
「話…?」
「ええ。…正直、私こそ反対していたんです、Aちゃんがこの村を離れて軍人になるなんて話。それを伝えたくて、昔…たしか今の幹部の皆様が揃われた頃。久しぶりに会った時、文句交じりにAちゃんに話したんです。そしたらあの子、なんて言ったと思います?」
──────
────…
『──そんなに軍での仕事がいいわけ?』
『んー、仕事はまぁ…慣れちゃった部分もあるけど…どちらかと言うと、仕事仲間に恵まれているからかな。おかげで毎日笑いが絶えないよ』
『ふーん…幹部の皆さんって本当恵まれていて羨ましいしいなぁ。Aちゃんみたいな良い子が傍にいるなんて』
『…私が、良い子?あはは…!そんな事ないよ、私だって人並みに汚い面もあるよ?』
『……そう?』
『本当だってば。例えばそうだなぁ…女の子にモテて嬉しそうにしていたら醜い嫉妬するし、悪戯が過剰すぎて絶交したくなる時もあるし、本気の悩み相談されてもどうでもいいなと思っちゃう時もあるし…サレナも含めて、皆んなが思う"良い子"なんかじゃないよ』
正直意外だった。私にとってAちゃんは頭脳明晰・容姿端麗などといった"理想的な女性"であった。羨ましいという感情よりも、彼女にとってかけがえのない存在に…もっと言うなれば、彼女を独占したいという欲を幼き頃から抱いていた。しかしそれも、私の知らぬ間に様変わりしていたのかもしれない。
『いつか運命の人と出会って結婚するのか、子宝に恵まれるのか、それとも寂しく戦争で命を散らすのか…どうなるのかは分からないけど。それでも…彼らと出会えた今までの人生は後悔していないし、これからもしないと思うんだ』
『……ほんと、幸せそうに笑うね』
『えへへ…大好きなんだ、皆の事』
『……、』
『…まぁ、恥ずかしいから本人達の前じゃ言えないけどね!』
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にゃむ吉(プロフ) - アイリさん» コメントありがとうございます。主人公の心情・状況を丁寧に表現したくこのような手法をとりました。少しでも楽しみのひとつになれたのなら幸いです… (2022年6月5日 17時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
アイリ - ちゃんと日記のとこ漢字かけなくてひらがなになっていくの好きやわ… (2022年6月4日 22時) (レス) @page20 id: 018c1614bc (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - にゃむ吉さん» 了解です。意図的でしたのなら、口を挟んで申し訳ないです。これからも応援させていただきます。頑張ってください( *˙ω˙*)و グッ! (2022年3月19日 18時) (レス) id: 00820fe97a (このIDを非表示/違反報告)
にゃむ吉(プロフ) - ウイさん» メッセージありがとうございます。指摘いただいた内容については当初は意図した表記だったのですが、読み直すと確かに違和感もありましたので伝えたいニュアンスを含め修正しました。引き続きよろしくお願いいたします。 (2022年3月19日 7時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 気になったのでご指摘させて頂きます。ps(分かりますか?)のセリフで『あり?』という物がありまして、『あれ?』では無いのかなと思いました。何か意図的にやっているなら申し訳ないですが気になったのでコメント失礼しました。今後も頑張ってください (2022年3月19日 7時) (レス) @page32 id: 00820fe97a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃむ吉 | 作成日時:2021年7月16日 16時