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「(愛、か。こんな形で知るなんて…皮肉な話やな)」


手記に挟まっていた何の柄も無い真っ白な便箋。少し歪んだ形ながらも想いを込めて綴られている文字から、彼女の最期まで必死に生きていたという証が伝わってくるようであった。広げた手紙を再び便箋に戻し内ポケットへ仕舞う。その腕に飾られた腕時計が間もなく待ち合わせの時間を知らせようとしていた。するとこちらに向かってゆっくりと気配が近づいてきた。


「──フューラーさん…ですか?」
「!えぇ…もしかして、貴女が…」
「サレナ・シラーと申します。…Aちゃんがお世話になりました」


現れたのは小さな花束を抱えたひとりの女性。淡く微笑む様は、どこかAの事を彷彿させるような色を持っている。彼女に案内され向かったのは、彼女と…彼女の家族が眠っている場所であった。墓石に花束を添え、手が空いたタイミングを見計らい例の物を取り出す。


「こちらが彼女の残した手記です。…勝手ながら中身を拝見してしまい、申し訳ない」
「い、いえ!謝らないでください!私達こそAちゃんの要望とはいえ、幹部の皆様の了承も無しにこんな真似をしてしまい……それに、きっと皆さんが読まれる前提で隠して(・・・)あったんじゃないですか?」
「…流石、ご明察通りです」


彼女の推察通り、あの空っぽの部屋に隠されるように…正確には、俺にしか(・・・・)見つけられない場所に置かれていたのだ。何てことない、幼き日に何気なく二人で交わした"大切な物を仕舞う場所"にある時点で、洞察力の優れた兄さんでも見抜けなかったのも納得がいく。そんな昔の事を思い返し、つい悄然とした顔を晒してしまった。そんな俺に気づいたのか、シラーさんの口が再び開く。


「もしかして…Aちゃんをご自身の家族として迎え入れた事、後悔されているのですか?」
「…!そう、ですね。私自身が決めた事ではないとはいえ、あの日(・・・)彼女と出会った事が、もしこの結果を招いているのだとしたら…全く後悔していないと言えば、嘘になります」


養子入りを提案する両親を説得していたら、大人しく部屋の中にいたら…あの日、名前を伝えていなかったら(・・・・・・・・・・・・)どうなっていたのか。途方もない後悔はいつまでもこの背に重くのしかかっていた。



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にゃむ吉(プロフ) - アイリさん» コメントありがとうございます。主人公の心情・状況を丁寧に表現したくこのような手法をとりました。少しでも楽しみのひとつになれたのなら幸いです… (2022年6月5日 17時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
アイリ - ちゃんと日記のとこ漢字かけなくてひらがなになっていくの好きやわ… (2022年6月4日 22時) (レス) @page20 id: 018c1614bc (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - にゃむ吉さん» 了解です。意図的でしたのなら、口を挟んで申し訳ないです。これからも応援させていただきます。頑張ってください( *˙ω˙*)و グッ! (2022年3月19日 18時) (レス) id: 00820fe97a (このIDを非表示/違反報告)
にゃむ吉(プロフ) - ウイさん» メッセージありがとうございます。指摘いただいた内容については当初は意図した表記だったのですが、読み直すと確かに違和感もありましたので伝えたいニュアンスを含め修正しました。引き続きよろしくお願いいたします。 (2022年3月19日 7時) (レス) id: ba49f73308 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - 気になったのでご指摘させて頂きます。ps(分かりますか?)のセリフで『あり?』という物がありまして、『あれ?』では無いのかなと思いました。何か意図的にやっているなら申し訳ないですが気になったのでコメント失礼しました。今後も頑張ってください (2022年3月19日 7時) (レス) @page32 id: 00820fe97a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にゃむ吉 | 作成日時:2021年7月16日 16時

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