にじいろの花束を。[Spring] JW (ページ27)

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しばらく3人で話をしたあと、先に来ていた重岡さんは｢明日も仕事があるんで先に失礼します｣って言って帰っていった。

最後の方はだいぶうちとけて、色んな話をした。
年齢が意外と近かったからかすぐ意気投合したし、
なんなら連絡先だってノリで交換した。

こうやって大人になってからできる友達ってなかなかおらへんやろ?
やから《なないろ》に来るとほんま色んな人と出会えて、仲良うなれて、だいぶいい刺激もらってる。

今、店内には俺と七海ちゃんの2人。
ゆったりしたカフェミュージックが流れる中、デルフィニウムを見ながらコーヒーを飲んで思い出に浸る。

色んなことを思い出しては、懐かしさで少し、泣きそうになる。

桐｢にしてもびっくりしたわ、まさか七海ちゃんが覚えてはるなんて...｣

｢照史さんこそ、忘れてると思ってた｣

桐｢忘れられへんよ! 今の自分があるのは、...ここのおかげやし。やから今でも保育士できてんねん｣

｢あの時より、ずっといい顔してますよ、照史さん｣

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2年前。

保育士という職に就いてもう何年か経っていて、仕事も落ち着いてきた頃。
職場の先生たちは優しいし、不自由はない。

...と言いたいところだけど、まだ男性保育士は世間から見たらだいぶ少なくて。
どんなに頑張ったって園の保護者の方からの信頼性はなかなか簡単には得られへん。

今日もそうやった。
新しく入ってきた子のお母さんと少し、お迎えの時間にお話をしていただけなんに。
周りの保護者の方から｢園児のお母さんに色目を使ってる〜｣なんて影で言われる始末。

不倫ドラマの見すぎじゃボケェ!!
...って言いたくなる気持ちを抑えて、お話をしていたお母さんには誤解を招くような形になってごめんなさいと謝り。
保護者の誰かが言いつけたのか今回のことを知っていた園長先生から呼び出され、以後気をつけますと頭を下げる。

別にええねん、男性保育士がまだ馴染みがないことくらい。
理解した上でこの仕事選んだしな。
せやけど、こんなことずっと言われたら...。

もう辞めようか、この仕事は好きやけど続けていいやろか。
そんなこと考えながら歩いて帰っていたときに
ふと、目の前にオープンしたばかりなのか真新しい小さなカフェ。

それが、俺と《なないろ》、七海ちゃんとの出会い。