３０（Kiside） ページ30
俺は今…
自宅のベッドの上で、太輔に夕食を食べさせられている…
「はい、あーん。」
「…太輔…俺、一人で食えるよ？」
「うん。いいの。あーん。」
「……あ、そ………あーん……」
何がいいんだか、よく分かんないけど…
まぁ…太輔がそうしたいなら、俺は太輔のしたい様にやらせる
きっと色々辛い思いさせたんだろうし、それに…
「んふふ。」
「ん？」
「太輔がうちにいる…。」
ずっと一緒だと思ってた太輔と、少しの間だけど離れて暮らしていたのは事実で…
俺も久々のこの空間をもう少し味わいたい
「…宏光…」
「……ごめんな。俺…太輔の気持ち分かってやれてなかったよな…。…誰よりも繊細で優しいお前だから、一人で抱え込んじゃったんだろ？」
レンゲを持つ手をぎゅっと握ってやったら、ポツリポツリと話し始めた
「色々あって…宏光との会話もいつの間にかグループや仕事の事ばかりになって…」
「うん。」
「最近じゃ仕事が忙しくて、その会話すら少なくなって…」
「ん…」
「なんか…寂しいって言うか…虚しいって言うか…」
「うん…。」
「そんな時に…」
戸惑うように揺れる瞳
きゅっと噛み締められる唇
「いいよ、言って？」
優しく促すと、また口を開いた
「……そんな時に、宏光が渉に相談してる姿見て……嫉妬した…」
自分なりに、時と場合によって相談する相手は選んでるつもり
けど、それが太輔にとって辛い事だなんて思いもしなかった
いや…きっと今までなら太輔も、それほど気に掛ける事なんてなかったのかもしれない
全て…俺と太輔の間に知らず知らずのうちに出来てしまった溝のせい…
「渉といる時の方が楽しそうに見えて…宏光を取られたくないって…。だから…渉の看病を口実に渉に話しに行ったんだ。」
「話…？」
太輔の言ってる事が分かんなくて、首を傾げた俺を太輔が力なく笑う
「んふふ。宏光はにぶちんだからね。」
「へ？どう言う事？」
「いいの。宏光は分かんなくても。」
「えー！教えてよ！」
「んふふ。……そんな宏光の事、可愛いって…全部受け止めて分かってやれるのは俺だけだって思ってたのに…。俺、何やってんだろうね…。」
悲しげに笑う太輔の肩を、ぐっと引き寄せ、抱き締めた
「今だって…これからだって、俺の事を一番分かってんのは太輔だけだよ。」
「宏光…」
そう…太輔以外いないんだ
.
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作者名：MISA
| 作成日時：2018年5月31日 16時
