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17(Kiside) ページ17

くるりと背を向けて立ち去ろうとする太輔を俺は必死に引き留めた

太輔は何か誤解してる

ちゃんと話さなきゃ、誤解を解かなきゃってそう思った





「待てって。ちゃんと話してよ。太輔が言いたい事、俺、分かんない。」

「そのままの意味だよ。俺から言う事は何もない。」

「太輔、ちゃんと話し合おう?」

「話すって何を?何も話してくれなかったのは宏光の方だよね?」





冷めた目

抑揚を出さない声が、太輔の悲しみや静かな怒りを表してる事は、すぐに分かった

苦しげに歪められる綺麗な顔…

まだ…大声で怒鳴られたり殴られたりした方がどんなに楽かと思った





「太輔、」

「俺が渉の所に行く前から、調子悪かったんだって?」

「…」

「どうして言ってくれなかったの?」

「それは…」





自分の太輔に対する小さな罪悪感が、理由を口にする事を躊躇わせる





「……やっぱ言ってくれないんだ?」

「…」

「そうだよね。こんな事、言えないよね…」

「太輔…?」





何…?

太輔は、何を考えてる…?





「ニカかぁ…。」

「…」

「何でニカかなぁ…」

「…」

「俺、何やってんだろうな…」





俺に視線を合わせることなく、虚ろに天を見上げて、独り言みたいに呟く太輔に、真意が分からず何も言い返せない





「はぁ…」





重苦しく吐き出されたため息

そして呟かれた言葉に、嫌な予感が頭を過った





「…俺……なんか、疲れた…」

「太輔…」





太輔がゆっくりと俺に瞳を向ける

その視線は、何かを決心したみたいに真っ直ぐに俺に向けられた





「…宏光……俺ら別れよう…」

「ぇ…」

「もう…どうして良いか分かんないよ…」

「たぃ…」

「宏光の傍にいるの…辛い……もう…楽になりたい…」





きっと…

ずっと前から、太輔の中には俺に対する不安や不満が存在してたんだ

太輔の言葉で今頃そんな事に気付くなんて…





「………………分かった」

「……っ…!」





俺にそれを拒否する資格なんてあるんだろうか

俺がずっと太輔を苦しませていたのなら、今俺が太輔にしてやれる事は…





「別れよう……太輔。」





太輔を自由にしてやる事…






.

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作者名:MISA | 作成日時:2018年5月31日 16時

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