愛の行方 * ページ7
「もう、いいの。」
彼女のそれが意味すること。それは、”Aの生活に俺は必要ない”ということ。
「なんで?俺、何か君に嫌なことしちゃった?迷惑なことあった?言ってくれれば直すから、だから、」
「……もう、うんざりなの。その愛が。私には合わなかったみたいね。」
そう言いながら、彼女は
「これ。私が書くとこは書いてあるからあなたも書いたら出して頂戴。」
先程置いた指輪の隣に出されるのは、彼女の綺麗な字で必要事項が書かれた離婚届。
全てが急すぎて、今起きている事態を飲み込めず、俺はそれを呆然と眺めることしかできない。
「新しい家はもう決まってるの。ここはあなたに譲るわ。」
彼女は、もう名前すら呼んでくれないようだ。
「まって!」
まとめた荷物を抱え、
しかし、それは彼女を引き止めるための条件反射。何を言うかなんて、考えてる筈もなく。
「…何もないなら行くね。」
「ちがう!何もなくない。…俺の愛がうざいって言っても、俺は本当に、心から君を愛してるんだ。今言ったところで、この状況が変わるとは思わない。だから、最後に、君への想いを伝えさせて。」
愛してる
「……あなたって、本当に私のことどうでもいいのね。」
涙ぐむ俺とは対称的に、彼女は涙のひとつも見せず玄関の戸を閉めた。
――――――――――――――――――――――
扉の先で、一息漏らす女が一人。
「……これで、よかったのよ。何もかも。」
自分の行動を正当化するように零し、新居へと歩を進めた。
BELOVED 『愛の行方』
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:名奈 | 作成日時:2021年5月15日 22時