FO"U"REVER ページ5
春が眩しく青く染まる頃。
「バンド組まね！？」
中学から一緒だが、ついにこいつも頭おかしくなったのか…。
「…何言ってんだ？」
「バンド組も！」
「いや、急にどうしたよ。」
「このバンドがめっちゃカッコよくてさ、俺もやりたいなと思って！」
そう言って見せてきたのは、国民的なロックバンドの画像。音楽に疎い俺でも知ってるグループだ。
最近、うちの親もハマってたなと思う。
「大体、俺ら楽器できないのにどーすんだよ。」
「大丈夫、お前歌うだけでいいから。」
「え？」
「ボーカル。」
「え、俺ボーカルなの？」
「おう！お前いい声してるからさ。絶対歌声もいいに決まってる！」
「いや、俺の歌声聞いたことないだろ。俺歌うたうの苦手なんだけど…。」
「大丈夫だから！」
お前それしか言わないじゃん。
「でも二人じゃバンドにならないよなー。てかお前は？楽器できんの？」
「これから。とりあえずギター買ったから練習してる！」
「え！？楽器って安くないでしょ。どっから資金出したの。」
「通帳。」
淡々と言うなー…。
「ま、そういうことだから。ちゃんとボーカルの練習しとけよなー！」
そう残して、あいつは教室を出て行った。
どこまでも自由だなー…。
「あ、ちゃんと練習してる？」
翌週。
開口一番にこれとは…。
「んー、まあ一応。そういえばさ、お前がギターなのはいいとして、他の楽器どうすんの？」
「ふっふっふ、すでに手配済みなのだよ！」
あいつの後ろにいた二人が顔を出す。
「ベースとドラム！」
「どーも！」
「こんにちは。」
ここで顔を逢わせた彼らは、元々音楽が好きで、物心つく前から弾いたりしてたようだ。
「なあ、ちょっと今から合わせてみね！？」
「いや、いくらなんでも」
「いいねー！」
「やろやろ！」
…こいつら正気か？
普段使わない空き教室の扉を開くと、ギターとベースが一本ずつ置いてあった。
え、これ許可とってるの？
「はいみんな定位置ついてー。」
俺の場所も気になるが、それよりドラムがどうするのか気になった。
見ていると、彼は机からスティックを取り出し、椅子を並べた。なるほど。
「あ、お前真ん中な。」
「え？」
「いや、ボーカルは真ん中だろ。」
そうか…。
いや、そうだわ……。
「何歌うの？」
「そりゃもちろんあのバンドの曲に決まってるだろ。」
「タイトルは？」
「『膨張』。」
続
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作者名：名奈 | 作成日時：2021年5月15日 22時
