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思わず悲鳴を上げた途端、外で巻き起こる大爆笑。
何が何だか分からずに呆然としていると、
「深瀬ぇ。ご指名の小牧だぞ!」
隊長の大声と共に、またもや何かが飛び込んでくる。
「...深瀬さん。なんかごめんね」
「こ、小牧教官...あ、あの...この塊は...」
ああ、それね。
苦笑いしながら、教官が説明してくれる。
これは、タスク恒例の新隊員歓迎行事なんだよね。俺と堂上が入った時からの恒例なんだ。発端はね、堂上がこの草束をクマだと思い込んで殴ったんだ。俺はただ普通に悲鳴を上げただけだったんだけどね。
今まではみんな悲鳴を上げるだけだったんだけど、今日、笠原さんが...第2の堂上に...ブハハッ。
「そーなんですね...本当にクマが出たのかと思って、びっくりして叫んじゃいました」
「深瀬さん、ゴメンね...今年は女子もいるしやめとこうって隊長に進言したんだけど...」
「いえいえ、小牧教官が来てくれたので...嬉しかったです」
まあ、来てくれたっていうか、投げ込まれたって感じだったけどね。
「.......明日もきついだろうから、早く寝なね」
あっ、そうだ。
さっきのお礼も言わないと。
「あ、小牧教官!さっきはテントまで運んでくださってありがとうございました!
すみません、重かったですよね...」
「いえいえ、全然重くなんてなかったよ。むしろもっと食べて?」
上官に迷惑をかけてしまったのに、優しく許してくれる教官。
やっぱりかっこいいなぁ。
「...もう、俺行くからね。おやすみ」
「あ、待って!」
思わず教官の袖を引いてしまった。
引き止めるつもりなんてなかったのに。
「ん?どうしたの?」
「すみません...あの、ちょっと、あれはほんとのクマじゃないって分かってるんですけど、ちょっと怖くなっちゃって...。
引き止めちゃってすみません。なんでもないです」
「なんでもなくないでしょ?深瀬さんが寝るまで、ここにいるから。ねっ?」
最後まで優しすぎる教官。
胸がどきどきするのには、気づかない振り。
「ありがとうございます...」
教官が私の頭をゆっくりと撫でてくれたおかげで、怖い気持ちも薄れ、すぐに寝ることができた。
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るり(プロフ) - 絢さん» ありがとうございます!!ご期待に添えるように頑張ります! (2017年5月13日 5時) (レス) id: f6d4dd4d44 (このIDを非表示/違反報告)
絢(プロフ) - この作品、すごく好きでいつも読ませていただいてます!頑張ってください! (2017年5月11日 20時) (レス) id: 021a2c26af (このIDを非表示/違反報告)
無名 - こんにちは、堂上教官ファンです。作品すごくおもしろうです。 (2017年3月29日 15時) (レス) id: 30bcd37fb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るり | 作成日時:2017年3月4日 20時