23冊 ページ23
ここまで良いところなしの笠原に、唯一の手塚に勝てる訓練があった。
ちなみに、この2人はまだいがみ合いを続けていて、訓練の度に競い合っている。
その間に挟まれた私はたまったもんじゃない。
まあ、どの訓練でも手塚が僅差で勝ってたんだけどね。
今日の訓練は、リペリング。
UH-60JAからの降下訓練。
UH-60JAというのは、タスクの虎の子のヘリであり、自衛隊からの払い下げだ。
これが防衛部の訓練に使われることなんてありえないけどタスクの奥多摩訓練では毎回使われるらしい。
最初に新人3人がリペリングを行う事になった。
最初は笠原。さすが山猿とばかりに、思い切りよく飛び出していった。
新人とは思えない上手さに、地上でもどよめきが起こっている。
次は、手塚。...手塚、この訓練苦手そうだな。
ヘリに乗り込む時からずっと顔色が悪い。
高所恐怖症、とかかな。
後ろ向きに勢いよく飛び出すの、慣れるまではちょっと怖いよね。
まあ、ちょっとびびってた割には、完璧とは言えないもののまずまずなフォームで飛び出していった。
最後は私。私もこの訓練得意なんだよね。
リペリングのコツは、思い切り飛び出して体を安定させる事。
軽く助走をつけて一気に飛び出し、地面に着くギリギリまでスピードを緩めない。
あと3メートルというところで一気に減速して、地面に降りる。
「深瀬、到着しました！」
「...今年の新人、やばくねえか？」
「ああ、逆さ吊り、楽しみにしてたのになぁ」
「ふーかせさん」
「あっ、小牧教官！」
周囲の反応に戸惑っていた私のところに、小牧教官が来てくれた。
「リペリング、すごい良かったよ」
そう言って、軽く頭を撫でてくれる。
「あのー、何でみなさん反応が微妙なんでしょうか？」
「あ、それはね、ククッ、新隊員がこれをやった時はね、飛び出しの勢いが足りなくて逆さ吊りになるのが恒例なんだ。今年はそれが見られなかったから、物足りないんでしょ」
「ああ、手塚は失敗しないし、笠原は山猿ですもんねぇ」
「まあ、俺としては部下が優秀で嬉しいよ」
頭に置いていた手を一回弾ませて、教官は去っていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 257人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るり(プロフ) - 絢さん» ありがとうございます！！ご期待に添えるように頑張ります！ (2017年5月13日 5時) (
レス) id: f6d4dd4d44 (このIDを非表示/違反報告)
絢(プロフ) - この作品、すごく好きでいつも読ませていただいてます！頑張ってください！ (2017年5月11日 20時) (レス) id: 021a2c26af (このIDを非表示/違反報告)
無名 - こんにちは、堂上教官ファンです。作品すごくおもしろうです。 (2017年3月29日 15時) (レス) id: 30bcd37fb8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るり | 作成日時：2017年3月4日 20時
