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変わったね、お互いに。 ページ22

「ここが私の家。どうぞあがって。何もないけど……」

「……お前はこの数年、ずっと此処にひとりで暮らしていたのか。」

「うん。」

二人がAの家に戻ってきたとき、もう夕方だった。

ひっそりとした静かな部屋。インテリアも何もない、殺風景な部屋。その部屋に刻まれた彼女の思い出も、Aの一部だと感じた冴は、壁にそっと触れた。


……お前は何度、この部屋で、一人きりで泣いていたのだろうか。

Aと冴は夕食と風呂を済ませ、ふたりで眠っていた。

「……?」

Aが目を覚まして身体を起こすと、ベランダに一人で夜空を見上げる冴の姿があった。

「……」

Aはその姿を、自分と重ねた。冴くんが隣にいてくれたから、今はぐっすり眠れていた。だけど、冴くんが恋しくて堪らなかったあの頃は、毎日のように悪夢を見ていた。

頭の中が辛いことでいっぱいに溢れて、どうしようもできなくて、眠れなかった。

ベランダで夜空を見上げては、冴くんを、家族を、居なくなってしまったモモのことを考えていた。

「……冴くん。」

「……起こしたか。」

「何か、目が覚めたから。」

「……そうか。A、」

「なに?」

「お前に話さなければならないことがある。」

「…?」

「俺の夢が、変わった話だ。」

「!夢が、変わった……?」

「ああ。俺の夢は、世界一のストライカーになることではなく…ミッドフィルダーになることにした。」

「…そっか。」

「だから、その夢を凛に託そうとした。」

「うん。」

「…凛は否定した。ストライカーになること以外は受け入れなかった。だから賭けをした。…凛が負けた。だから、俺は凛を俺の人生から切り離した。…ストライカーの夢は、俺にとってそれ以外価値がないと本気で思わせてくれた。世界は広くて、凄い奴等ばかりだった。」

「……そうだったんだ……」

「ああ。」

君は本気で夢を賭けて、凛くんとやり合ったんだね。
(恋人)とは違う、大切な弟と。

お互い譲れなかったんだ。本気で、もう引き返すことは出来なかったんだ。
私たちは、この数年の間にずいぶんと変わったね。

君の夢がどう書き換えられていても、それを君が望むなら、私はその夢を世界で一番応援する。

でもそれを言葉にして伝えるのは、私たちのやり方じゃない。だから私は、あなたを優しく抱きしめるの。

あなたの孤独も、駄目なところも、書き換えられた夢も、変わったあなたも全部丸ごと愛して抱きしめるの。

愛してる。→←愛しくて仕方のない、大好きなあなた。



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桜花(プロフ) - 真昼さん» コメントありがとうございます♡この作品もお気に入りなので続きをお楽しみに! (2023年2月3日 19時) (レス) id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 冴が本当に好きなので、嬉しかったです\(//∇//)\続きが楽しみです! (2023年2月3日 16時) (レス) @page16 id: 94c427d0c3 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - らむねさん» コメントありがとうございます!こちらの作品も無理せず自分の納得が行くように頑張ります! (2023年1月1日 20時) (レス) id: e0b4a0dc7c (このIDを非表示/違反報告)
らむね - 凛君の作品の方から来ました!!糸師兄弟結構好きなので嬉しいです!無理せずに自分のペースでいいので頑張ってください!! (2023年1月1日 14時) (レス) id: 41465224bb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜花 | 作成日時:2022年12月31日 21時

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