第9話 ページ10
間違いない。今、レジでレンタル手続きをしてくれている彼は、花垣武道君だ。
会計が終わって、もう外に出なくちゃいけない。
でも、ここで逃したらもう会えないかもしれない。
今は遅い時間だし、他に客もいない。
「あ、あの……!」
「はい?」
「花垣武道君、ですよね……?」
「何で俺のこと……?」
「Aです。覚えてない、かな……?」
「……?……!!え、Aちゃん!?」
大声を出してしまい、慌てて口を塞ぐ武道くん。
「久しぶりだね。」
「すっげぇ久しぶり……中学以来……?」
「そうだね。中学生の受験期、忙しかったし、急に連絡途絶えさせちゃってごめんね。お母さんに武道くんの連絡先消されちゃったから……」
「そうだったんだ……」
「うん。武道くん、お仕事終わるまで待つからさ、一緒に帰らない?ちょっと、話したいことがあるんだ。」
「え、仕事終わるまであと1時間くらいだけど……いいの?」
「うん。久しぶりに会えて嬉しいから。」
「わかった。なるだけ早く終わらすから。」
「うん、わかった。また後でね。」
***
ビックリした……
まさかAちゃんに会うとは思ってなかった。
Aちゃんは、5歳の時に知り合った俺の幼馴染。
小学生になってから、カクちゃんと3人で遊ぶことも多かった。
頭が良くて、運動はそこそこ、かわいい女の子だった。
優しくて、彼女を好きなヤツもいれば、気を引きたくてわざと意地悪するヤツもいたな。
俺にとっても大切な女の子。
だけど俺、こんな姿で会いたくなかった。
情けねぇ……
なのに何でAちゃんは、1時間待ってでも俺と話がしたかったんだろう……
仕事が終わって店を出たら、近くで何かを買っている彼女の姿を見つけた。
……Aちゃん、ホント綺麗になったな。
最初見たとき、全然分かんなかったもん。
こんな美人、俺の知り合いに居たっけって、思うくらいに。
鼻を赤くし、マフラーに顔をうずめる彼女の横顔は、本当に綺麗だった。
73人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜花 | 作成日時:2022年10月20日 21時