第5話 ページ6
中学2年生になった時のことだった。
ヒナちゃんから、例のヒーローと付き合うようになったって聞いた。結局私は、彼の友達という立場から抜け出せなかった。
ヒナちゃんに武道君を紹介されたけど、幼馴染だから知ってるよ、と笑った。そうだったの!?と驚くヒナちゃんが可愛くて、隣にいる武道君も幸せそうだった。
学校の帰り、武道君とヒナちゃんが無邪気に公園で遊んでた。二人にAちゃんも一緒に遊ばないか聞かれたけど、私は疲れたから二人を見守ってるね、と伝えた。
……いいなぁ。幸せそうで、羨ましい。
「……混ざらないんですか?」
「!直人くん……直人君も今帰り?」
「はい。補習が終わったので。」
「そっか、おつかれさま。」
「Aさんはふたりと遊ばないんですか?」
「あの二人は恋人同士だからね。邪魔しちゃ悪いよ。」
「で、でも…!Aさんはあの彼のこと、好きなんじゃないですか?」
「え?」
「だってずっと見てるじゃないですか……!すっごく悲しそうな顔して…僕……」
そんな分かりやすかったのかな。
「ありがとう、君は優しいね。」
そっと屈んで頭を撫でる。直人くんはまだ背が小さい。
きっとこれから伸びるんだろうね。
「好きだよ、彼のこと。けどね、私はヒナちゃんも好きだから、どうしたらいいか分かんないの。どっちかを取るって選択ができない弱いヤツ。ほんと、嫌になっちゃうね。」
「……Aさん、僕じゃ駄目なんですか?」
顔を赤くしながら、直人君は聞いてきた。
「Aさん、僕はあなたが好きです。だから、僕じゃ、駄目ですか……?」
「直人くん…」
「確かに僕はAさんより背は小さいし、頼りないかもしれないし子供だと思うかもしれないけど……!いつか立派な人になって、Aさんを貰いに来ます!!」
誠実な愛を私に向けてくれることが嬉しかった。
けど、ごめんね。
私はやっぱり武道くんが好きみたいなんだ。
報われない恋なのは分かってるのに、何で諦められないんだろうね。
本当に私は馬鹿なんだろうね。
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年10月20日 21時
