偽りの箱庭【灰谷竜胆】2 (ページ16)

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第六十ニ話ページ16

「じゃあ、竜ちゃんがこの指輪をくれたのは……」

「ああ。あの時は、本気でお前を諦めようと思ってた。けど俺は諦めが悪い男だからさ、どうしてもお前を諦められなかった。だから、お前がどう想っていたとしても、俺はお前を愛してる。妹してじゃなく、A自身を。」

「……」

Aはそっと竜胆の手を取って、自分の頬に寄せた。

「A……?」

するとそっと何かを取り出した。そしてそれを竜胆の手へと。

次の瞬間、竜胆の手には、指輪が嵌められていた。

「ホントはね、私も竜ちゃんのことが好きなの。お兄ちゃんとしてじゃなくて、竜ちゃんが。」

「!!」

「どうしてすぐに気づかなかったんだろうね。私が辛いときも、悲しいときも、苦しいときも、ずっと隣にいてくれたのは、いつだって竜ちゃんだった。

私のヒーローは、すぐ傍にいたのに。

ごめんね、ずっと辛い思いさせちゃって。」

「……」

ギュッとAを竜胆は抱きしめた。

「お前は何も悪くねぇよ……。ごめん、俺、嬉しすぎてどうにかなりそう……。」

「竜ちゃん……」

竜胆はそっと、Aの頬を撫でた。

「……A、」

「いいよ、聞かなくて。」

「ああ。」

竜胆は顔を近づけ、Aは目を閉じた。

そして、二人の唇は重ねられた。