検索窓
今日:18 hit、昨日:9 hit、合計:74,286 hit

第五話 ページ6

「パパ!」

「A。後ろから抱きつくのは危ないよ。久しぶりだね。元気にしてたかい?」

「うん!」

「背も伸びたね。元気そうで良かった。」

Aを軽々と抱き上げた。

「本当にAは甘えんぼうさんだね。」

「でも甘えるのは末っ子のとっけんなんでしょ?」

「よく特権なんて言葉知ってたな。偉いぞ。」

「えへへ。」

「蘭、竜胆、こんなに甘えんぼうな妹で大変だろ?」

「まーね。Aいっつも俺か竜胆に引っ付いてるもんなー。」

「この前兄ちゃんがA泣かして大変だったんだよ。」

「はははっ、一番の苦労人は竜胆だな。蘭、あんまAを泣かせないでくれよ?」

「それは無理な約束かもな。」

「兄ちゃんA泣かせるの本当やめて。慰めるの結構大変なんだし。」

暫く父親と話していたときだった。

「ねぇパパ、ママは?ママは今日来ないの?」

「ああ。ママは今日も来れないんだ。ごめんな。会わせられたらいいんだけどな。もう少し待ってもらえるかい?」

「そう…はーい。」

「ん、ごめんねA。」

…またA、我慢したんだな。うちの末っ子は、我慢が得意だ。

長男であるはずの兄ちゃんはマジでワガママ。
寝起き悪いと当たり散らすし面倒くさいし。

Aは幼いのにその眠い眼をこすってちゃんと起き、朝の支度を自分でしている。そういうとこ、マジで兄ちゃんも見習ってほしい。

甘える時はとことん甘えるけど、自分のことは自分でがんばる!って、あのノートを大事にしてたもんな。まあ不器用だから髪は俺が括ってるしまだ出来ること限られてるけどな。

お前は生まれてから一度も母親にあったことないよな。

これからも、俺らの母親からお前に会いに来ること、多分ねぇよ。

お前はそれでも、きっといつか会えるって信じて待ってるんだろうな。

学校では女子から目の敵にされて、嫌がらせしてくる野郎もいて、Aにダチは殆どいない。

だから、Aは家族以外の前では上手に喋れない。

ままごとをしたり本を読んでは、ママはどんな人なんだろ。ママってどんな人?って寂しそうに聞いてきたA。

Aは母親というものを知らないから、誰よりもその存在に憧れている。

口下手で泣き虫でおっちょこちょいの甘えんぼう。

それでもやらなきゃいけない事はしっかりして、我慢強くて優しくて、笑った顔は太陽みてぇに眩しくて。

俺や兄ちゃんがいないと壊れてしまいそうなコイツのことを、何が何でも守ってやりたいと思った。

第六話→←第四話



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (58 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
209人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。