第三十三話 ページ36
「Aちゃん、俺らこれから集会あるから、もう行くね。」
時刻は夕方、東京卍會に所属する彼らは集会なるものがあるらしい。
「そっか。気をつけてね。」
「うん、Aちゃんもね。今日は楽しかったよ。Aちゃん、ありがとう。」
「全然!むしろお礼を言うのはこっちだし、何なら私の方がはしゃいじゃったもん!じゃあまたね。」
「うん、また学校でね。」
ソウヤ君達と別れたけど、もうだいぶ人も少なくなってきた。
こんなに長時間外にいるの、ホントに久しぶりだわ。
そういや、竜ちゃんたち、今頃どうしてんだろ?
「A、」
「あ、竜ちゃん。あのお姉さんたちは?」
「逆ナンの奴らなら帰った。アイツは?」
「ソウヤ君達も帰ったよ。蘭ちゃんは?」
「もう着替えに行ってる。」
「蘭ちゃん日差し強いとこ苦手だしね。そっか、もう帰る時間か。竜ちゃん達凄い絡まれてたけどちゃんと遊べた?」
「あんまり。」
「だよね。何か私真っ先に遊びに行っちゃった…ごめんね。」
「いいって。海、来たかったんだろ?楽しかったか?」
「うん!凄くね。」
「俺あんま遊べなかったからさ、ちょっと付き合えよ。」
「うん、いいよ!」
「それじゃ…!っしょっと。」
「わ!?」
「しっかり掴まってろ。」
竜ちゃんは私を難なく横抱きにして、海に走った。
「速いよ!!怖い怖い!!」
「お前、ホント怖がりだよな。」
「笑わないでよ、怖いものは仕方ないし!」
確かに怖いけど、逞しい腕の中だと、安心するわ。
それに、竜ちゃんの笑顔、すっごく可愛い。
たまに見せる、無邪気な表情。
こうやって弟っぽいところ見せてくれるの、嬉しいけど、何だかズルいよね。可愛すぎて、何でも許してしまいたくなる。
A、お前ホント綺麗になったよな。
背も髪も伸びて、体重も前よりついた。
笑顔はすげぇ可愛いけど、でも前よりずっと大人びている。
お前の笑顔が、お前が、好きだ。
俺に笑いかけてくれるお前、ホントに綺麗だ。
この気持ちを持ち続けたら、きっとどこかでお前を傷付ける。それだけはできねぇ。
こんな風に触れられるのも、もうないかもしれねぇ。
これからはきっと、お前には簡単に触れられなくなる。
身近でお前の笑顔を見るのは、俺じゃなくなる。
なら俺はこの笑顔を忘れたらダメだ。
お前には、世界で一番幸せになってほしいって、本気で思ってんだよ、俺は。
だからA。
俺はお前を忘れることにした。
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年9月4日 18時